「敢然」とは?
「敢然」(かんぜん)とは、危険や困難をかえりみず、覚悟をもって思い切って行動するさまを意味する言葉です。
見聞きすることは多くても、漢字で書こうとすると書けない言葉があるものですが、この「敢然」も、その一つではないでしょうか。
「敢」の字の読み方として、「敢えて」(あえて)はわかりやすいかもしれませんが、「敢」(かん)という読み方は、「勇敢」(ゆうかん)が思い浮かばない限り、戸惑うかもしれませんね。
「敢」と「然」の意味
「敢」は、音読みが(かん)、訓読みが(あえて)。意味は、①あえて②思い切ってする。「敢然」の「敢」は、②の意味によるものです。
「然」は、音読みが(ぜん、ねん)、訓読みが(しかり、しかし、しかも、もえる)。意味は、①そのとおり、しかり。②状態を示す形容詞のあとに添えるもの。③しかし、しかるに、などの接続助詞。④もえる。
「敢然」の「然」は②の意味で用いられています。同じような例は、憤然、悄然など数多く存在します。「敢然」は、「敢」+「然」で、思い切ってする様子、ということになります。
「敢然」の使い方
「敢然」という言葉を使うことができるシチュエーションは、限定されます。背景に、その人にとって危険なことや困難な状況があることが一つの条件です。
そのうえで、覚悟をもって行動するわけですから、それらの危険や困難は、乗り越えるのがたやすいものではないことになります。
苦戦が伝えられる闘いへの挑戦、難易度の高いなにかへの挑戦、スポーツの試合などに頻繁に用いられます。反面、ゆったりのんびりした日常の行為には使わない表現です。
たとえば、買い物などで街に出る時に「敢然と街に出る」とはいいません。しかし、民衆が暴徒化して事件を起こした街に出る場合は、「敢然と街に出る」はぴったりの表現となります。
「敢然」の文例
- 国と正義を守るために、兵士たちは敢然と敵地におもむいた。
- サッカーのワールドカップで、優勝候補のイングランドと対戦することになった日本チームは、敢然として競技場に向かった。
- 浪人は許されない経済状況のなか、鈴木君は敢然と東大の受験に挑んだ。
- 敢然と眉を挙げ、多くの若者が環境破壊反対のデモに加わった。
「敢然」の類語
「勇敢」の意味と使い方
勇敢(ゆうかん):勇気をもち、危険や困難にひるまずに物事に立ち向かうこと、勇ましく果敢な態度のことを意味する言葉です。「敢然」とほぼ同じ意味ですが、「勇敢」は幼い子どもたちでも口にする、一般的な言葉として知られます。
【文例】子どもたちは、勇敢に敵とたたかう戦隊ドラマのヒーローが大好きだ。
「果敢」の意味と使い方
果敢(かかん):決断力が強いさま、思い切って物事に立ち向かうさま、を意味する言葉です。勇猛果敢という四字熟語がありますが、その意味は、力強く勇気にみち、決断力のあるさま、を意味しますので、「敢然」にはさらに意味が近い言葉といえましょう。
【文例】ボクシングの世界王座決定戦で、山田選手はチャンピオンに果敢に挑み、ついにチャンピオンベルトを手にした。
「決然」の意味と使い方
決然(けつぜん):きっぱりと固く心を決めたさま、思い切ったさま、を意味する言葉です。「決」という漢字は、①決める、決まる、はっきりとどちらかに決める、②思い切って、きっぱりと③切れる、破れる、裂ける、などの意味をもちます。
「決然」の「決」は、①と②の字義によって用いられていることから、「決然」は「敢然」よりも「きっぱりと決める」ことに重点が置かれた言葉であることがわかります。
【文例】居酒屋をチェーン展開している山本氏は、いっそうの拡大を夢見て、決然とアメリカ進出を選択した。