「恭順」とは
「恭順」(きょうじゅん)とは、命令にかしこみつつしんで従うこと、素直にうやうやしく従うこと、またそのような態度を見せることを意味する言葉です。
「恭順」をさらに深く理解するために、この漢字二文字をそれぞれ検証していきましょう。
「恭順」の字義解説
「恭」は、音読みが(きょう)、訓読みが(うやうやしい、つつしむ)。意味は、うやうやしい、かしこまる、つつしむ、です。
「順」は、音読みが(じゅん)、訓読みが(したがう、すなお)。意味は、①従う、素直。②さしさわりがない、です。「恭順」では①の意味で使われています。
この二つの漢字で構成される「恭順」ですから、命令に謹んで素直に従うという意味を持つことが分かりますね。
「恭順」の使い方
「恭順」は、権力者、為政者、上司、師、先輩、親など、明らかに自分より立場が上の人間からの命令や指令に、尊敬の念とともにうやうやしく従う時にのみ使える言葉です。つまり、目上からの命令に従う状況において用いる言葉であり、その逆はまずありません。
年下であったり、自分より立場が下の人の中にも尊敬すべき人物は当然存在します。その人物から「申し訳ないのですが、~をして頂くことはできますか?」とお願いされて、心から了承したとしても、それを「恭順」と表現することは、少々不自然です。
「恭順」の具体的な言い回しについては、古めかしく硬い表現であるだけにイメージが湧きにくいかもしれません。一般的には、定型文ともいえる恭順の意を表す(示す)のほか、恭順な、恭順を誓う、恭順する、などのように使用されます。
「恭順」の文例
- 独立国家を立ち上げた王に、家来たちは次々と恭順の意を表した。
- 中村家の父親は厳格な性格で、二人の娘、恭子さんと順子さんは、まさに名の通り父に恭順な日々を過ごしている。
- 独裁者のまわりには、恭順を誓うようなイエスマンばかりが集うものだ。
- 創業者の子孫が社長を務める企業には、社員は社長に恭順することが当然という空気がありがちだ。
「恭順」の類語
「敬服」
「敬服」(けいふく)には二つの意味があります。
- 他者に尊敬の念をもって従うこと。
- 感心し、尊敬の念を持つこと。
「恭順」の類語としては、1.の意味が当たります。
【文例】A社は小さな会社ではあるが、有能で誠実な社長に敬服する社員が一丸となり、目覚ましい発展を遂げてきた。
「服従」
「服従」(ふくじゅう)とは、他者の命令や意志に従うこと、他の支配につき従うこと、手下となることを意味する言葉です。
「服」も「従」も従うという意味を持つ漢字です。「恭順」と異なるポイントは、「服従」は、うやうやしく、謹んで、などの敬いの意味を含まないこと。
尊敬の念を持って、かしこまって従うというよりも、ひたすら従うことに重点が置かれているのが「服従」です。「絶対服従」というきわめて強い言葉も存在しますね。
【文例】鈴木部長は、部下に対して服従を要求するが、パワハラすれすれの行為と言える。
「忠誠」
「忠誠」(ちゅうせい)とは、忠実(上司等の言いつけを真面目に果たすこと)、忠義(真心を尽くして臣下としての務めを果たすこと)を尽くすこと、人物や組織、理念などに対して、尊敬の念を持った服従の態度などを示す言葉です。
「忠誠心」などをはじめ、一連の類語の中ではもっとも一般的で馴染み深い言葉かもしれません。「忠誠を誓う」は使われることの多い言い回しです。
【文例】独立国家を立ち上げた王に、すべての家来は忠誠を誓った。
「恭順」の反対語
「反逆」
「恭順」の反対語としては、「反逆(叛逆)」が挙げられます。意味は、国家や権力者のやり方に背き、逆らうことです。
権力者に恭順の意を示して従っていた者が、いつしか、そのやり方に背いて反逆する(謀反を起こす)ことも、歴史上の事実として多数存在します。