「言いがかり」とは
「言いがかり」とは、「難癖を付けること」「道理が通らない文句」を指す言葉です。「言い掛かり」「言い掛り」「言掛り」と表記されることもあります。
辞書には「言い出して後に引け無い状態になること」という意味も掲載されていますが、現代においては、こちらの意味ではほとんど用いられません。
「言いがかり」の使い方
「言いがかり」は、そのまま名詞として用いるほかに、「言いがかりを付ける」「とんだ言いがかりだ」という言い回しでよく使われます。
【使用例】
- お客様係として苦情は謹んで承るが、中には言いがかりとしか言いようがないものもあるので対応が大変だ。
- 電車の中で人相の悪い男に言いがかりを付けられた。
- 妙な言いがかりを付けやがって、どういうつもりだ!
- 自分で商品を壊しておいて、不良品だと言い張るなんてとんだ言いがかりだ。
「言いがかり」の類語
「因縁」
「因縁(いんねん)」にはさまざまな意味がありますが、言いがかりという意味もあります。「因縁を付ける」とは、無理に理由をこじつけて相手の非を責めたてるという意味です。
「いちゃもん」
「いちゃもん」は、言い争い・もめごと・苦情といった意味の「いちゃつき」と「文句」が合わさった俗語です。言いがかりと同義で、「いちゃもんを付ける」のように用いられます。
「屁理屈」
「屁理屈(へりくつ)」は、まるで筋の通らない理屈・道理に合わない理屈という意味です。「屁理屈をこねる」「屁理屈を並べる」のように用いられます。
「あやをつける」
「あやをつける」は、言いがかりを付けるという意味の慣用句です。糸の綾なすさまを物事に喩えた表現なので、「あや」は漢字で書くと「文」または「綾」となります。
「堅白同異」
「堅白同異(けんぱくどうい)」とは、辻褄の合わない無茶な論理を展開すること・詭弁という意味です。語源は、中国の戦国時代の故事。
公孫竜が「堅くて白い石を見ると、白いことはわかるが堅さは分からない。一方、手で触って堅さを調べると色は分からないので、堅くて白い石は存在しない」という詭弁を弄したことによります。
方言における類語
方言にも「言いがかり」「言いがかりを付ける」に相当する表現があります。
【甲州弁】
- いいぐさり:言いがかり。
- けちょおつける:言いがかりを付ける。《例》なにょおけちょおつけるだ。(なに言いがかりを付けてるの。)
【東京弁】
- こだわり:因縁。言いがかり。《例》こだわりをつける。(言いがかりを付ける。)
【魚津弁】
- へぼつけ:言いがかり。言葉尻を捕らえる。
【津軽弁】
- あやつける:ガンつける。ちょっかいをかける。言いがかりを付ける。
「言いがかり」の英語表現
意訳「喧嘩をふっかける」
"pick a fight"は「喧嘩をふっかけている」というイディオム。「言いがかりを付ける」という意味でも使うことができます。
【例文】
- "You are picking a fight."(あなたは言いがかりを付けている。)
意訳「筋の通っていない」
"unreasonable"は「理不尽」「筋の通っていない」という意味です。理不尽な主張という意味の"an unreasonable claim"などを使って「言いがかり」を表現することができます。
【例文】
- "That is an unreasonable claim."(それは言いがかりだ。)
意訳「明らかに間違った指摘」
"false"は「間違っている」という意味です。「言いがかり」という言葉の「明らかに間違っている」というニュアンスを強調したい場合は、"false"を使うと良いでしょう。"a false accusation"は間違った指摘、"a false statement"は間違った定義という意味です。
【例文】
- "That is a false accusation[statement]."(それは言いがかりです。)
また、話し言葉としては、シンプルに"It is just wrong."という表現でも、「とんだ言いがかりだ」というニュアンスを伝えることができます。
「言いがかり」と「クレーム」「苦情」
「クレーム」は、英語の"claim"に由来する和製英語で、契約条項に違反があった場合に損害賠償を請求すること、または、苦情・異議という意味です。
「苦情」は、他から被った不利益に対する不平や不満という意味ですから、「クレーム」も「苦情」も、理不尽な文句とは限らないことが分かります。
例えば、AさんがBさんに文句を言う、次の二通りの場面を考えてみましょう。
- 歩きスマホをしていたAさんが、Bさんにぶつかった拍子に自分のスマホを落とた。
- Bさんが歩きスマホをしている時にAさんにぶつかり、Aさんが転んでしまった。
1は、明らかに屁理屈ですから「言いがかり」です。2は、Aさんの不満はもっともですから「言いがかり」とは言えません。一方、理不尽かどうかに関わらず、1も2もAさんに不満があるので「クレーム」「苦情」と言うことができます。
近年、「モンスタークレーマー」などが問題視されるように、「クレーム」「苦情」にネガティブな印象が強くなりました。しかし、中には耳を傾けるべき「クレーム」「苦情」もありますので、すべてを「言いがかり」としてしまわないように注意が必要です。