「ロケハン」の意味
「ロケハン」という言葉は外来語を省略したものです。日本語では長くて発音しにくい言葉を、語呂良く省略することが多い特徴があります。日本語の話し言葉では音韻のリズムが重視されたり、活字では短い文章の中に効率的に情報を盛り込もうとする傾向から、日本語の中で広く定着している慣例だといえます。
例えば固有名詞であれば「自由民主党」を「自民党」、「市教育委員会」を「市教委」と縮めたり、外来語では「パソコン」「コンビニ」「セクハラ」といったように非常数多くの省略語が流布しています。「ロケハン」もその一つですが、これは主にはテレビや映画などの業界用語で、「屋外など、スタジオ外の撮影場所を下見して探し、確保すること」という行為を意味しています。
「ロケハン」の語源
「ロケハン」の由来
「ロケハン」はもともとは「ロケーション・ハンティング」という外来語を省略したものです。「ロケーション・ハンティング」は英語で「location hunting」と表記します。「location」という名詞は「位置、場所」という意味で、「野外の撮影地」といった意味合いもあります。また「hunting」は元来「狩り」という意味ですが、「追求、探索」といったニュアンスもあります。
このように「ロケーション・ハンティング」とは「野外の撮影地を探すこと」という英語であり、発音しやすいように縮めたのが「ロケハン」ということになります。
日本での「ロケハン」の始まり
日本でこの言葉を使い始めたのは、ヘンリー小谷という大正・昭和初期に活躍した映画監督だといわれます。小谷は日本映画の草創期に、本場米国のさまざまな最新技術を紹介した人物で、その際に米国で使われていた「業界用語」も持ち込んだようです。その一つが「ロケハン」で、それまで日本の業界では「ロケ探し」と呼んでいたそうです。
「ロケハン」の種類
テレビや映画などの「ロケハン」にはいくつかの種類があります。例えば「シナリオロケハン」、撮影用のロケハン、アニメ制作のためのロケハンなどです。
映画やドラマなどは原作があることが多く、できれば撮影も原作に則った場所で行うことが望ましいのですが、予算や条件的な制約などから難しい場合も多いようです。このため原作の雰囲気を損なわず、作り手が十分表現できるような代替地を、脚本執筆の段階から調査し盛り込んでいくのが「シナリオロケハン」です。
実際に映像を撮影する際には、脚本とは別に制作スタッフがあらためて適切な場所を探します。これが撮影用のロケハンです。「場所の選定」「下見の撮影」「撮影許可の交渉」など多くのスタッフが何段階も繰り返し行うのが通例だそうです。映像表現はテレビや映画の「命」ですから、俳優の演技とともに「ロケハン」がいかに重要な作業であるかが分かります。
実写ではないアニメーションの世界でも、作り手が空想で背景などを描いているのではなく、多くの作品では実際の場所を「ロケハン」して作品をイメージしリアリティを出すのが一般的だとされています。
「ロケハン」後の撮影地が「ロケ地」
こうして、よりよい映像作品のためにスタッフが苦労を重ねてロケハンを行った結果、撮影場所が決定し映画などの撮影が行われます。古い時代を描く作品では、原作とは異なり、当時の雰囲気を残した別の地域を全国や海外で探し回ったり、海外が舞台のアニメ作品では当事国のその場所でロケハンが行われることもあるそうです。
舞台となった実際の場所は「ロケ地」と呼ばれ、ファンにとってはその作品の舞台に立てる〝聖地〟でもあり、ロケ地を調べては訪ね歩く熱心なファンの「聖地巡礼」がたびたび話題になります。有名作品の「ロケ地」は観光名所にもなるほどです。
「ロケハン」の例文
- 最近は「ぶらりバスの旅」「ふと立ち寄ったお店にアポなし交渉」といったテレビ番組が人気だが、実際には事前にかなりきっちりロケハンが行われているらしいよ。
- ちょっと前まで、電線や電柱が映らないような場所はなかなか見つからず、ロケハンは大仕事だった。今ではCGで簡単に映像加工できるようになった。
「ロケハン」のまとめ
テレビや映画の名作は「作り物」だと分かっていても、ついその世界に引き込まれる魅力があります。ロケハンなど作り手の苦労の賜物でしょう。最近は観光振興にもなると、各地の自治体がロケ地に名乗り出たり制作支援するといった活動が増えている様子。ロケハンも多少はやりやすくなったのでしょうか。