「刎頸」とは?意味や使い方をご紹介

「刎頸」という言葉をご存じでしょうか。スラスラと読める人、意味を説明できる人はかなりの言葉の達人かもしれません。「刎頸」はおもに「刎頸の交わり」「刎頸の友」という慣用句で用いられます。今回は「刎頸」の意味と使い方を説明します。

目次

  1. 「刎頸」とは?
  2. 「刎頸」の使い方
  3. 「刎頸の交わり・刎頸の友」の関連語

「刎頸」とは?

「刎頸」は、(ふんけい)と読みます。意味は斬首(ざんしゅ)、つまり、首をはねること、首を斬ることです。

「刎」切る、はねる「頸」を意味します。難しい漢字ですが、「頸」のほうは「頸椎(けいつい)」(7つの骨で構成される首の骨)という言葉で馴染みがあるのではないでしょうか。

「刎頸」はこの単語のみで用いられるケースは稀で、「刎頸の交わり」「刎頸の友」という言い回しで用いられることがほとんどです。これは次のような中国の故事に由来します。

「刎頸の交わり」の由来と意味

紀元前90年ごろに、司馬遷により中国の歴史書『史記』が書かれました。この中に記載されている話のひとつ、「廉頗藺相如列伝」(れんぱりんしょうじょれつでん)に、「刎頸之交」として語り継がれる二人の男の友情物語があります。

中国春秋時代、趙(ちょう)の藺相如(りんしょうじょ)は、秦との外交で手腕を示して出世しました。名将廉頗(れんぱ)は、藺相如が口先だけの戦術で昇格したと妬み、藺相如と出会ったら辱めてやると息巻きます。その話を聞いた藺相如は、廉頗を避け続けました。

情けない態度と嘆く部下たちに、藺相如は、廉頗と自分が争えば秦から国を守れないゆえに廉頗を避けるのだ、と諭します。これを伝え聞いた廉頗は、自らを恥じ謝罪しました。以来二人は、相手の為なら斬首されてもよいとまで言える友情を築いたということです。

実際に斬首があったわけではありませんが、「刎頸の交わり」は、頚を切られたとしても悔いがないほどの深い友情で結ばれた親交を表します。また、「刎頸の友」は、刎頸の交わりで結ばれた友だちのことです。

「刎頸」の使い方

上述したように、「刎頸」は「刎頸の交わり」や「刎頸の友」という言い回しで用いられることがほとんどです。これらは命を差し出してよいほどの友情、固い友情で結ばれた友という意味ですから、軽々しく使える言葉でもありません。

かつてこの言葉を世間に広く認知させたのが、疑獄事件で国会の証人喚問に立つ政治家や実業家の発言でした。社会生命を賭けるような場で、自身の人生に深い影響をもたらす友をそう呼んだのです。

【例文】

  • 政治の世界で成功する要素のひとつは、いかに刎頸の交わりを多く持てているかだといえる。
  • 鈴木専務と山田専務は、互いを刎頸の友と呼び合う間柄で、共にこの会社を作り上げてきた。
  • 軽々しく刎頸の友などと呼ばれると、不信感をもってしまう。

「刎頸の交わり・刎頸の友」の関連語

「刎頸」は単体で用いることはほとんどないので、ここでは「刎頸の交わり・刎頸の友」のようにとても親しい友人関係を表す言葉を紹介します。

莫逆の友

「莫逆」(ばくげき/ばくぎゃく)は『荘子』に出てくる「心に逆らうこと莫し(なし)」に由来する言葉で、とても親しい間柄を表します。

莫逆の友」(ばくぎゃくのとも)は気心が通じ合っている親しい友人、「莫逆の交わり」(ばくぎゃくのまじわり)は心から打ち解け合っている間柄を指す慣用句です。

【例文】

  • 直江兼続は前田慶次の莫逆の友としても知られている。
  • この事件をきっかけに、彼と莫逆の交わりを結んだ。

無二の友

無二の友」(むにのとも)は、唯一無二の友他とくらべられないかけがえのない大親友という意味です。「無二」は、同じものが二つとないこと、並ぶものがないことを表しています。小説などでは、人以外の物事に対して用いるケースがあります。

【例文】

  • 由美子さんと理恵さんは、幼い頃から常に互いを必要としあう無二の友同士だ。
  • 剣を無二の友として、朝も夕も技の研鑽を積んだ。


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