「朧」とは?意味や使い方をご紹介

「朧」(おぼろ)という言葉をご存知でしょうか。「月」に「龍」と書く字ですが、「朧」単体というよりも、「朦朧」や「朧月夜」という熟語でこの字を知っているという方も多いかもしれません。俳句の季語のひとつでもあります。ここでは、「朧」の意味や使い方をご紹介します。

目次

  1. 「朧」の意味
  2. 「朧」の使い方
  3. 「朧」を使った熟語・関連語
  4. 「朧」とつくネーミングなど

「朧」の意味

「朧」(おぼろ)という言葉には、次のような意味があります。    

  1. はっきりしないさま。ほのかなさま。薄く曇るさま。ぼんやり。ほんのり。朦朧(もうろう)。〔春の季語〕
  2. 田麩(でんぶ)のこと。魚肉などをすりつぶして味をつけ、炒(い)った食品。
  3. おぼろ昆布、おぼろ豆腐、おぼろ饅頭などの略。

基本的な意味は1であり、 物がぼんやりとかすんでよく見えないさま、不確かな様子を言う言葉です。他の意味も、素材 などがぼんやりと混じり合っていることが視覚的にイメージされるのではないでしょうか。

字義解説

「朧」は「ロウ」と読んで、「月の光が薄くぼんやりしたさま」の意であると考えられています。字は「月」へんに「龍」と書きますが、「龍」は音符(発音をあらわす部分)であり、生き物としての龍を表すわけではありません。

しかし、不確かな存在である「龍」が、雲にまぎれて月の姿をぼんやりかすませていると想像すれば、字の意味も覚えやすいかもしれません。「朧月」という熟語もあります。

「朧」の使い方

「朧」は、例えば「朧に見る」「朧に覚えている」「朧な人影」「朧げな理解」などのかたちで、感覚されるものがはっきりせず、曖昧にかすんでいて、不確かであるという状態を表すために使います。

物事の形容として使う場合、「朧ろ(おぼ-ろ)」と、送りがなをつけて使われることもあり、どこまでが語幹であるのかはやや曖昧です。

文章語というほどではありませんが、風雅な趣を持つ言葉であるため、日常使いするには少しばかり古風で雅な印象を与える言葉かもしれません。反面、文化物のネーミングワードとしてはよく使われる傾向もあります(詳しくは後述)。

例文

  • 夕暮れの空には、朧な月(「朧月」としても可)が所在なげに浮かんでいた。
  • あの日、二人の間に何があったのか、私も朧げながら知っている。
  • 涙が止まらず、見るものすべてが朧ににじんでいた。
  • せっかく勉強したことも、朧げにしか思い出せないのでは意味がない。

※食品などの「朧」の使い方は省略します。

俳句での使用例

  • 暁の 夢かとぞ思ふ 朧かな(夏目漱石)
  • 朧夜の 人のあとより 歩きけり(長谷川かな女)
  • 大仏の 目には吾等も 朧かな(正岡子規)

「朧」を使った熟語・関連語

  • 朧影(おぼろかげ)…ぼんやりうつるかげ。
  • 朧駕籠(おぼろかご)…ぼんやりと見える、幽霊が乗っているという駕籠。
  • 朧銀(おぼろぎん)…銀製の器物の表面を梨子地にして光沢を消したもの。または、美しい特殊な光沢を有する装飾用の合金。四分一(しぶいち)。
  • 朧雲(おぼろぐも)…空一面に広がる灰色の雲。高層雲。
  • 朧染(おぼろぞめ)…着物の裾のほうを薄く、上を次第に濃くぼかして染めたもの。
  • 朧月夜(おぼろづきよ)…おぼろ月。または、おぼろ月の出た夜。「おぼろづくよ」とも読む。
  • 朧月夜(おぼろづくよ)…源氏物語の登場人物。六の君。
  • 朧富士(おぼろふじ)…編み笠のひとつ。頂が切り取られたように平らになっており、霞でおぼろに見える富士山に似ていることから。
  • 朧夜(おぼろよ)…おぼろ月の夜。

「朧」とつくネーミングなど

「朧」は古風かつ雅な印象を持つ言葉であるため、文化関連物や創作物の中で固有名詞として運用される例がしばしばみられます。

例えば、居酒屋の店名として「朧」の文字を採用する店主は多いようです。お酒に酔って、ぼんやりと気持ちよくなる感覚にあやかっているのかもしれませんね。

他にも、以下のようなものに「朧」の名がつけられています。

  • 日本海軍の駆逐艦。「艦これ」にも登場。
  • 漫画『バジリスク』の登場人物。
  • 漫画『銀魂』の登場人物。


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