「度重なる」とは
記者会見などで、「度重なる不祥事により、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」と頭を下げている場面を見たことはありませんか?
日常会話というよりは、改まった場で話すときや文章の中で使う言葉で、とくに、トラブルや事件、事故などの謝罪の際によく使われます。
この「度重なる」の意味は、「同じような事案が頻繫に起こること」です。次に「度重なる」を構成している「度」と「重なる」、それぞれの意味を見ていきましょう。
「度」の意味
「度」の読み方は、音読みで(ド・ト・タク)、訓読みで(たび)です。このほかにも常用漢字表に掲載されていない読み方があります。また、「度」は読み方により意味が異なります。
【度(ド)】
(ド)と読む場合、たくさんの意味がありますが、主な意味は次のとおりです。
- 物事の基準[例:制度。尺度]
- 程合い[例:限度。程度]
- 目盛り[例:温度。角度]
- 心の様子[例:度胸。態度]
【度(ト・タク・たび)】
「度重なる」の「度(たび)」は最後の意味です。
「重なる」の意味
- 同様のことが繰り返し起こること。かち合うこと。[例:不幸が重なる。予定が重なる]
- 物の上に幾重(いくえ)にものること。[例:段ボール箱が重なる]
「度重なる」の「重なる」はこの1の意味です。
「度重なる」の使い方
- 度重なるシステムトラブルに対しまして心よりお詫び申し上げます。
- イベントの度重なる中止で、興行の主催者やスタッフ、出演者は大きな打撃を受けています。
- 彼は度重なるケガにもめげずにプロ野球への復帰を遂げました。
- この地域は度重なる水害にみまわれ住民が疲弊(ひへい)しています。
「度重なる」の類語
「反芻」
「反芻」(はんすう)とは、「一度飲み込んだものを再びかみなおしてから飲み込むこと」です。ウシやシカなどにはこの反芻の習性があります。
この意味から転じたのが、「繰り返してよく考えたり、味わったりする」という意味です。「何回も繰り返す」ところは「度重なる」と似ていますが、以前に体験したことや感じたこと、考えたことなどに対して使うという点では異なります。
【例文】
- 私は困難に直面するといつも、高校の恩師の話を反芻しています。
- 職場へと向かう道すがら、昨夜起こったことをもう一度反芻しました。
「度度/度々」
「度度/度々」(たびたび)とは、「なんどでも繰り返し行われるさま」という意味です。「度度」は、ことの良し悪しにかかわらずに使いますが、繰り返されることや頻繫に行われるさまは「度重なる」と共通しています。
また、「しばしば」や「幾度も」も、「度度」と同じ意味を表します。口語では「度度」や「幾度も」、文語では「しばしば」が使われることが多いようです。
【例文】
- 公園での騒音に対しては度度利用者に注意をしています。
- この郷土資料館では、住民参加型のイベントが度々行われている。
「往往/往々」
「往往/往々」(おうおう)は「物事がしばしばあるさま」という意味で、「往往にして」の形でもよく使われます。
「頻繫に起こる」という点は「度重なる」に似ています。しかし、多くの場合、「往往」が使われるのは、「統計的に見てそういうことが起こりやすい」というような文章です。
【例文】
- SNSでは些細なことから炎上することが往往あります。
- 急いでいる時は往往にして事故やミスが起こるものです。
「度重なる」の英語表現
英語では、「度重なる」を「repeat」(繰り返す)や「frequent」(たびたび起こる)など言葉で表現します。
【例文】
- The crops in the fields were damaged by frequent typhoons.(度重なる台風で畑の作物が被害を受けました。)
- Repeated requests for money are trouble(度重なるお金の要求はもめごとになります。)