「精悍」とは?
「精悍」という言葉は、「精」になじみはあれど、「悍」は読み方も意味もお手上げ、という人が多いのではないでしょうか。「精悍」は「せいかん」と読みます。
「精悍」の正確な意味を探るために、まずは「精」と「悍」それぞれの字義についてみていきます。
「精」と「悍」の字義
「精」は多義的な字ですが、「精悍」においては、心、たましい、気力、という意味で用いられています。同じ使い方の熟語としては、「精神」「精魂」などがあります。
「悍」の字義は、あらい、あらあらしい、たけだけしい、気が強いなどが挙げられます。一般的に多く使われることのない漢字ですが、例えば「悍馬」(かんば)という言葉があり、「暴れ馬」という意味で用いられています。
「精悍」の意味
「精悍」は、かつては字義に忠実に、たくましく勇敢な気性を表していましたが、現代日本語では、そこから派生した力強さや勇ましさ、鋭くたくましく活力がある様子が、顔だち、表情、目つき、身体つき、態度などに表れているさまという意味が一般的です。
実際の使い方も、「精悍な眼差し」「精悍な顔つき」など、見た目から漂う雰囲気に注目した言い回しが大半です。
辞書によっては、「精悍」に才気が鋭いことという意味を挙げるものもあります。そのためか、現代で用いられる「精悍」には、ただたくましいだけではなく、顔立ち、身体つきもきりっと引き締まり、凛々しく知的な敏捷さのニュアンスも含まれています。
「精悍」の使い方
「精悍」を使うとき、ほとんどの場合は、人間、それも男性を対象とします。主に「見た目」ですが、それに加えて「才気が鋭い」という特質を備える者に多く使われる傾向があります。(まれに、動物の描写にも使われることがあります)
たんに「見た目」だけではなく、意志の強さや勇敢さが「眼差し」「顔つき」などを通して窺えることも重要ということですね。ですから、筋骨隆々のマッチョというより、精神の強さを窺わせる雰囲気が「精悍」の持つイメージにより近いといえるかもしれません。
一方、女性に対して使うことはほとんどありません。「たくましい身体つき」の女性もいますが、少数でしょう。ただ、鋭さ、勇敢さ、活力にあふれた女性は多々存在しますので、将来的には「精悍な女性」も誉め言葉として使われるようになるかもしれません。
「精悍」の例文
- 酔っ払いに絡まれていた彼女を救ってくれたのは、精悍な眼差しの青年だった。
- サッカーのワールドカップの開会式は、精悍な身体つきの選手たちが居並び、圧巻だ。
- 空手には身体能力に加えて気構えも重要なだけあり、空手家はみな精悍な顔つきをしている。
「精悍」の類語
「雄々しい」
「雄々しい」(おおしい)は、「男男しい」、という表記もあるように、男性のみを対象とする言葉です。男らしいさま、勇ましいさま、いさぎよく力強いさま、を意味します。
「精悍」がおもに見た目に使われるのにくらべ、「雄々しい」は、見た目だけではなく、男らしく勇敢な行動そのものを表すのに適しています。
【例文】
- 消防士たちは、燃え広がってゆく山火事を消火しようと、雄々しく山の中へと入っていった。
- 片足を痛めながら15ラウンドを戦い抜いたチャンピオンの雄々しい姿は、観客の目に焼き付いた。
「凛々しい」
「凛々しい」(りりしい)は、表情、動作、態度などがきりりと引き締まっているさま、力強さや意志の強さ、勇ましさなどが感じられて頼もしい様子、などを意味する言葉です。
こちらは「精悍」のように身体つきのみを対象として使うことはありません。多くは男性を対象としますが、女性や子供にも用いることができます。
【例文】
- 若君の凛々しい元服(げんぶく)姿は、殿様をたいそう喜ばせた。
- ハンサムウーマンと称される真由美さんは、眼差しも凛々しく、後輩女子たちの憧れの的だ。