「なりかねない」とは
「なりかねない」は、以下の三つの要素に分解することができます。
- 動詞「なる」の連用形「なり」
- 動詞の後について不可能や否定の意味を表す「かねる」の未然形「かね」
- 前のことを否定する「ない」
これらの要素から、2+3で「かねない」という二重否定の表現が作られ、それが「なり」の後ろのついて「なりかねない」となっています。
よって、そのようなこと(結果など)にならないとは言えないという意味になり、さらに、そうなるかもしれないという可能性を示唆する肯定の慣用句的な表現になるのです。
要素2:「かねる(兼ねる)」とは
「かねる(兼ねる)」には、①二つ以上の役割や働きを持つこと。②一方だけでなく他方も考えること。③(動詞の連用形について、その動詞を否定して)~ができない、~がむずかしい、という意味があります。上述のとおり、「なりかねない」の「かねる」は③の意味です。
①は「今回の遠出は仕事と観光をかねている」、②は「上司に気をかねて(気兼ねして)黙っておいた」、③は「困っている様子を見るに見かねて話しかけた」のように使います。
要素2+3:「かねない(兼ねない)」
「かねない(兼ねない)」は、~しないとは言えない。~するかもしれないという意味です。動詞の連用形に後ろに付いて、前の言葉を否定する働きがあるので、「彼女なら新記録も樹立しかねない」のように使います。
そのほかにも「行きかねない」「やりかねない」などの複合語として見聞きする機会も多いですね。
「なりかねない」の使い方
「なりかねない」は、将来の物事の予測や可能性を表す場合に使われます。ただ、「なりかねない」は、将来の良い結果よりも、むしろ悪い結果や好ましくない結果を予測する場合に使われることが多い表現です。
「例文」
「なりかねない」の類語
「かもしれない」
「かもしれない」は、結果は不確実だけれども、可能性があるという意味です。疑問の助詞「か」に、詠嘆・感動の助詞「も」がついた「かも」と、予測できないという意味の「しれない」の連語です。
「なりかねない」と同様、将来の可能性について予測する意味でよく使われる表現ですが、良い結果、悪い結果、両方の予測に使うことができます。
【例文】
- 天気予報によると今夜は雨が降るかもしれないよ。
- 彼女は、君に冷たい態度をとっているけど、本当は君のことが好きなのかもしれないな。
「予想する/予測する」
「予想(よそう)する」は、予想という漢字の通り、予め(あらかじめ)結果を想像するということです。同様の表現に、「予測する」がありますが、これも予め結果を推測するということです。どちらも、良い結果、悪い結果、両方で使うことができます。
【例文】
- 競馬場や場外馬券売り場の周辺には、当たりを予想する予想屋がたくさんいる。
- 経済学者を集めて、来年の景気動向を予測する番組をテレビでやっていた。
「あり得る(有り得る)」
「あり得る(うる)」は、その結果が起こる可能性がある、当然そう考えられるという将来の可能性を予想・予測する表現です。「なりかねない」は、二重否定による肯定で可能性を予測するのに対し、「あり得る」は、単純に肯定する形で可能性を予測しています。
【例文】
- 組合の話では、景気回復を受けて会社の業績が戻ってきたら、年末のボーナス支給もあり得るらしい。
- まさかとは思うが、事故ではなく、事件としても十分にあり得ると考えて捜査しよう。