「雑多」とは?
「雑多」は、(ざった)と読みます。「雑」という字が、雑な、粗雑なといった言葉で馴染み深いためか、「雑多」は、ネガティブな言葉と誤解されやすい言葉です。
「雑多」は、次の意味を持つ言葉です。種類や大きさなどにおいて、いろいろなものが入り混じっていること、また、そのさま。本来はこのように、良いも悪いもない言葉です。
「多」が、単純に数の多さを意味することは説明するまでもありません。一方、「雑」は、①まじる、まざる、入り乱れる。②まとまり、とりとめがない。③大まかで粗いという意味があります。この中で「雑多」の「雑」は、①の意味です。
「雑多」の使い方
異なる種類のものが多々存在している状態を「雑多」と称しますが、その数の多さに定義はありません。ですが、少なくとも2~3種類では「雑多」とは言えません。さまざまな異種のものが「入り乱れる」ニュアンスで使うのが一般的です。
「雑」にネガティブな意味が含まれるためか、「雑多」には、ごちゃごちゃしている、統一性がないなどのイメージがつきまといがちですが、どのような用い方をされているかは、前後の文脈で判断しましょう。
「雑多」にネガティブな意味を含ませないつもりでも、「雑多な雰囲気の部屋」と言われるよりは、「多様なセンスを持つ部屋」と言われたほうが嬉しいと感じる人は多いことでしょう。誉めたい時は、誤解されないように「雑多」以外の言葉のほうがよいかもしれません。
さまざまな「雑多」の状態
そもそも「雑多」を良い意味、悪い意味に感じるかどうかも主観的な問題と言えます。例えば、上記の本棚のイラストを見てどのように感じるでしょうか。玩具箱みたいで楽しい!と思う人、本が取り出しづらそう、ごちゃごちゃ落ち着かないと思う人など様々でしょう。
とはいえ、一般的な良し悪しの感覚が文脈で表されている例を挙げてみましょう。「雑多な種類の品揃えでセンスの統一性がない」「雑多な意見が飛び交い収集がつかない」などの状況ではネガティブなイメージで用いられています。
一方、「雑多な人種が集うグローバルな祭典」「さまざまな国々の雑多な物産が揃う店」などでは多様性、バラエティー豊かといったポジティブなイメージを含みます。
「雑多」の文例
- あなたのお店には、日本全国の雑多な名産品が置いてあるので、いつ来ても楽しいわ。
- 当合唱サークルには、老若男女、しかも様々な国の雑多な人々が集っています。
- 我が家は、赤ん坊から年寄りまで4世代の7人が同居しているので、家具も置物も雑多きわまる雰囲気で落ち着かない。
「種種雑多」とは?
種種雑多(しゅじゅざった):いろいろなものが入り混じっているさま、多くのものが脈絡なく雑然とあるさま。種種は、種類が多いことを意味します。(しゅしゅ)とは読みませんので注意しましょう。
【文例】
ニューヨークは、種種雑多な人種や職業の人々が集う、世界でも有数の多様性あふれる街だ。
「雑多」の類語
「多様」
多様(たよう):いろいろと種類の異なるものがあること、さまざまに変化に富んでいること、また、そのさまを意味する言葉です。「雑多」と比べて、ネガティブなニュアンスを含むことはありません。
わけても、「多様性」という言葉は、時代におけるキーワードのひとつとも言えるもので、英語での「ダイバーシティ」とともに頻繁に用いられます。
【文例】
多様な価値観、多様な個性、多様な生き方を認める社会を目指しましょう。
「多彩」
多彩(たさい):意味は次の2つです、①色の種類が多いこと、色彩が多く美しいさま。②種類や変化が多くて華やか、にぎやかなこと、また、そのさま。「雑多」と異なる点は、華やか、にぎやか、というポジティブな意味を明確に含むことです。
したがって、文脈のいかんにかかわらず、ネガティブなニュアンスは一切もたず、ポジティブなイメージで使われます。
【文例】
これだけ役者の顔ぶれが多彩な芝居だと、面白くないわけがない。