「慰留」の意味
「慰留(いりゅう)」とは、なだめて現在の職や地位に引き留めることを表す名詞です。サ行変格活用の動詞「慰留する」のかたちで用いることもできます。
この言葉は、何らかの理由で既に辞意を表明している人に対して使われる言葉です。そのまま辞めてしまわれては不利益や不都合が生じる際に「慰留」が行われます。
「慰」の読み方・字義
「慰」には、「イ」という音読みの他にも「なぐさめる」という訓読みもあります。「なぐさめる」とは、悲しみや苦しみを抱えた人の心をいたわるという意味です。
職や地位を退こうと考えている人の多くは、何らかの問題を抱えていることが多いもの。そのような人たちの話をよく聞き、安らかにしようという意図が「慰」の文字から読み取れるのではないでしょうか。
「留」の読み方・字義
「留」は音読みで「リュウ」と読めるとともに、訓読みでは「とめる」「とどめる」などと読めます。この場合の意味は、「動かないようにする」あるいは「ひきとめる」です。
辞職や辞任を考えている人は、ある組織から移動することを考えているともいえます。それを動かないように現在の場所にひきとめるのが、「慰留する」ことの目的です。
「遺留」との違い
「遺留(いりゅう)」とは、所持品を置き忘れたり何かを死後に残したりすることを意味します。「遺留する」の形で動詞として用いられるほか、「遺留物」のような熟語の一部として用いられるのが一般的です。
「慰留」とは読み方が同じため誤って使われることも少なくありません。特にパソコンやスマホなどの文字変換でミスをするケースが想定されるので注意が必要です。
「慰留」の使い方・例文
- チームにとっては現監督を慰留できるのがいちばんだが、次善の策として次期監督候補もリストアップしておくべきだろう。
- あなたがたとえどんな手段を使って慰留しようとも、結局は彼の強い辞意を翻(ひるがえ)すには至らないというのが一般的な見方です。
- 上司に辞表を提出した際にいちどは慰留してもらえると思っていたのに、あっさり受理されてしまい何だか複雑な気分だった。
「慰留」の類語・関連語
- 折衝(せっしょう)…相手と駆け引きを行うこと。
- 懐柔(かいじゅう)…自分の思い通りになるよう手なずけること。
- 留任(りゅうにん)…元の職や任務にとどまること。
- 重任(じゅうにん)…引き続きその職務に就くこと。再任。
- 固辞(こじ)…強くすすめられても固く辞退すること。
- 拝辞(はいじ)…いとまいごいすることをへりくだっていう言葉。
これらの類語・関連語のうち、1と2は「慰留」と同じく相手に働きかける言葉です。手法や意味合いは異なるものの、こちらの意図に沿って動いてもらえるようにするという点では共通しています。
3と4は、慰留した結果、こちらの思惑通りに留まってくれた場合に用いられる言葉です。つまり、首尾よく慰留できたということになります。
一方、5と6の場合は慰留したにも関わらず、相手の辞意を翻すには至らなかった場合に用いられる言葉です。特に「固辞」は「慰留」とセットで用いられることも多いので、合わせて覚えておくのがよさそうです。
「慰留」を英語で表すと?
「慰留」を意味する英語表現には、次のようなものがよく使われます。
- beg someone to stay
- persuade someone not to resign
1の表現を直訳すると「留まるように乞う」。2の直訳は「辞職しないように説得する」です。
いずれにしても日本語の「慰留」よりも内容が具体的かつ直接的で、説明的なものだといえるでしょう。
「慰留」を含む英文の例
- I submitted my letter of resignation, but was begged to stay.(私は辞表を提出したが、慰留された。)
- We will persuade him not to resign next week.(我々は、来週彼を慰留するつもりだ。)