「気兼ね」とは?
「気兼ね(きがね)」とは、他人の気持ちや感情を推し量って気を使うこと、遠慮して自分の言動を制約することです。「気」は、ここでは、感情、気分、心の働きなどの意味を表しています。
一方、「兼」には、兼業や兼務などのように、二つ以上のものを合わせて持つ、兼ねるという意味がありますが、そこから一方だけでなくもう一方のことも考える、遠慮するという意味を持つようになりました。
このような「気」と「兼」が組み合わされて、上記のような意味を持つ言葉として、一般に使われています。
「気兼ね」の使い方
「気兼ね」は、様々な人間関係において気を使う側が使う言葉ですが、これに否定の「なく」や「せず」をつけて、「気兼ねせず/気兼ねなく」という表現で気を使われる側が使うこともあります。
以下では、「気兼ね」と「気兼ねせず/気兼ねなく」両方の例文をご紹介します。
「気兼ね」の例文
- うちのマンションは壁が薄いので、大声や大きな音を出さないように近所に気兼ねして暮らしている。
- 夫の母と同居することになり、これから気兼ねして暮らすかと思うと気が重い。
- 忘年会の席をくじ引きで決めたら社長の横になったため、気兼ねして酒も料理もあまり楽しめなかった。
- 別れた恋人同士が同じ係にいると、周りの人間が気兼ねして空気が重くなる。
- キャットフードを前にして、三匹の猫たちは互いに気兼ねしているように見えた。
「気兼ねせず/気兼ねなく」の例文
- この部屋は防音設計だから、近所に気兼ねせず大音量でドラムの練習ができるよ。
- ああ、早く就職して家を出て、誰にも気兼ねせずに暮らしたい。
- 上司抜きで親しい同僚だけで気兼ねなく酒を飲もうよ。
- 御用の際は、どうぞお気兼ねなくお申し付けください。
「気兼ね」の類語
「気詰まり」
「気詰まり(きづまり)」は、周りの人に気を使って窮屈に感じることです。おおよそ「気遣い」と同じように、自分の気持ちや言動をセーブすることから生じる息苦しい気持ちを表しています。
「気兼ね」には、相手に対する遠慮の気持ちが強いのに比べて、「気詰まり」は、相手との関係や雰囲気が窮屈で息苦しい感じがあります。
【例文】
- シンポジウムの後の質疑応答で、誰からも質問が出なかったので、会場は気詰まりな空気に包まれ、司会者が慌ててフォローした。
- 初めてのデートで彼女と湖畔を歩いていたが、二人とも何も話さず、気詰まりな時間が流れた。
「気遣い」
「気遣い(きづかい)」は、いろいろと心配や遠慮などして相手のために気を使うことです。また、なにかよくないことが起こるかもしれいないという心配や懸念のことも「気遣い」と言います。
前者の意味が「気兼ね」の類語です。「気遣い」には、遠慮という気持ちよりも、相手を心配する気持ちが強く表れています。
なお、後者の意味では、例えば、情報管理の場面で「うちのシステムのセキュリティはハイレベルだからハッキングされる気遣い(=懸念、おそれ)はない」といったような使い方をします。
【例文】
- 雨宿りしている女性に傘を差し出したら、お気遣いなくと断られてしまった。胡散臭い男に見えたのだろうか。
- やり手の課長は、仕事に厳しいだけでなく、部下のことをフォローする気遣いができる人だ。
「遠慮」
「遠慮(えんりょ)」には、以下のような意味があります。
- 相手に対して、控えめな言動をすること。
- やめること。辞退すること。
- 拒否、断りの婉曲な表現。
- 遠い先々のことまで見通して考えること。
「気兼ね」の類語としては1の意味が該当しますが、2の意味でも、相手の気持ちや感情を推測したり、周りの事情を考慮したうえで物事をやめたり、辞退する場面もあることから類語と言えるでしょう。
なお、3の意味では、喫煙を遠慮してください、お誘いを遠慮しますなどと使います。4の意味では、深謀遠慮(先々のことを深く考えて、綿密な計画を立てること)のような四字熟語で使われています。
【例文】
- 結婚当初から、同居している小姑に遠慮しながら暮らしてきたが、もう限界だ。
- 何も僕のことを気遣う必要はないから、遠慮なく話してごらん。
- 喪中につき新年の御挨拶は遠慮させていただきます。(3の意味)