「拡充」とは
「拡充(かくじゅう)」とは、組織・体制や設備、あるいは制度といったものを広げたり、大きくしたりして充実させることです。
「拡充」の字義
「拡」は、旧字「擴」の教育漢字(小学校1年から6年までに習う漢字)で、手(扌:てへん)と広げる(廣げる)を組み合わせて、手で広げるとなり、ひろげる、ひろがる、ひろめるという意味を持っています。
一方「充」は、育つという意味の「𠫓」の下に、人の体を表す「儿」をつけて、子供が成人することを表します。そこから転じて、みちる、みたすと、あてる、あてがう、あてはめるといった意味を持っています。
以上の各漢字の字義を見ると、自然に拡大・成長するのではなく、人為的に規模を大きくすることが「拡充」であるとわかります。
「拡充」の使い方
「拡充」は、世の中の様々な組織・団体や工場などの設備を大きく充実したものにするときに使われます。また、制度を時代の変化に合わせて、不足する内容を加えるときにも「拡充」を使います。
【例文】
- 自衛隊は、創設以来その装備を拡充してきた。
- わが社は、クリーンエネルギー需要の高まりから、既存の工場と設備を拡充して太陽光パネルの生産量を3倍に増やす予定だ。
- 低迷する組織率向上のために、来年は労働組合の組織拡充と組合員の確保を呼びかけるキャンペーンを張ろうと思う。
- 日本では、高齢社会に対応した介護保険制度の拡充が喫緊(きっきん)の課題だ。
「拡充」の語源
中国の儒教の経書(けいしょ)の一つである『孟子(もうし)』の「公孫丑篇(こうそんちゅうへん)上」の中で、著者の孟子が次のように述べているのが「拡充」の語源です。
読み:およそ我に四端(したん)有る者は、皆擴(ひろ)めてこれをを充(み)たすことを知る。
訳文:すべて人間には四つの端緒があるのだから、これを拡大して中身を満たしてゆけば、(仁義礼智の徳を身につけることが出来ることを)理解できるはずだ。
「四つの端緒」は、人が生まれながらに備えている仁・義・礼・智の芽生えのこころを指します。性善説を主張する孟子は、「四つの端緒(四端説)」を拡充すれば、天下を安んじることができ、拡充できなければ、父母にさえ十分仕えることもできないと説いています。
「拡充」の類語
「拡張」
「拡張(かくちょう)」は、範囲や規模、勢力などを広げて大きくすることです。日常的に見られるものとしては、道路の拡張工事といったものがありますね。
【例文】
- 高速道路の拡張工事のために夜間の交通規制が行われている。
- 1922年のワシントン海軍軍縮条約によって、各国は軍備縮小に舵を切ったが、1936年には条約が無効となり、再び軍備拡張が始まった。
- 先の総選挙では、閣僚の不祥事が続いたために与党勢力に逆風となった結果、野党勢力が拡張を果たした。
「発展」
「発展(はってん)」は、物事の勢いなどが広がって、活発になったり、グレードアップすることです。社会の発展とか経済の発展といった使い方をしますが、恋愛関係が発展するという表現もありますね。
【例文】
- わが社の未来の発展のために、積極的な設備投資と人材育成に力を入れることになった。
- 最初は小さな収賄事件だったが、捜査を進めていくうちに過去に例のない疑獄事件(政治問題となった大規模な贈収賄事件)に発展した。
「拡充」の反対の意味に近い言葉
「縮小」
「縮小(しゅくしょう)」は、大きさや規模を小さく縮めることです。物事の大きさや規模は、時代の変化に合わせて、拡充・拡大または縮小することは世間でよくあることですね。
【例文】
- コンビニスイーツ台頭の影響を受けて業績が悪化している大手洋菓子店が、業務内容の縮小を検討し始めた。
- 建築家の彼が今作っているのは、大型ショッピングモールの実物100分の1の縮小模型です。
「削減」
「削減(さくげん)」は、物の量や予算などを削って減らすことです。予算削減などはニュースでよく耳にしますね。
【例文】
- 不況で営業の経費が削減され、接待費のねん出が難しくなってきた。
- 家計簿診断を受けて、食費削減を提案されたが、それだけはなんとしても避けたいなあ。