「達筆」の意味
「達筆(たっぴつ)」には、文字や文章を上手に書くことという意味があります。また、書いた文字や文章そのもののことも指して「達筆」と言います。
「達筆」というと「字が上手」とイメージする方も多いでしょうが、ハネが力強いなど、筆使いに勢いがある場合も「達筆である」と表すことができます。
「達筆」の使い方
「達筆」という言葉は、「達筆をふるう」のように単体で使われることもありますし、「達筆な文字」のように他の言葉を修飾するかたちで使われることもあります。
例文
- 私の上司はとても達筆である。
- 私の祖母は達筆な人であり、その文字には彼女自身の人柄がそのまま表れている。
- 書道家である彼はとても達筆で、彼の書いた文字からは力強さが伝わってくる。
「達筆」の英語表現
「達筆」を英語で表す場合には、a good handやgood handwritingといった表現を使うことができます。goodで「上手である」ことを表します。そして、a handやhandwritingは「手書きの文字」「筆跡」を意味します。
また、goodの代わりに、beautiful、neatといった単語を使うことも可能です。beautifulには「きれいな」「見事な」、neatには「きちんとした」「整頓された」という意味があります。
【例文】
- My teacher writes a good hand on the board.(私の先生は黒板に達筆な文字を書く)
- My father has good handwriting.(私の父は達筆だ)
- Her name was written in a beautiful hand.(彼女の名前は達筆で書かれていた)
- The boy has neat handwriting, though he is still five.(その少年はまだ五歳だけれども、達筆である)
「筆」という漢字を含む他の言葉
健筆(けんぴつ)
「健筆」には、文字や絵を上手に書くこと、その文字や絵そのものという意味があります。また、文章や漢詩、和歌などを上手に次々と作っていくこと、その人という意味もあります。
【例文】
- 私の祖父は健筆を振るい、多くの人たちに感動を与えた。
- 彼は健筆家なので、あっという間に作品が完成する。
悪筆(あくひつ)
「悪筆」は、字を書くのが下手なことやその文字自体・その人のことを表します。「達筆」とは反対の意味を持つ言葉です。
【例文】
- 彼の悪筆はどうにかならないものだろうか。
- 悪筆な人は、その文字の下手さゆえに損をすることがある。
捺筆(だっぴつ)
「捺筆」とは、右斜め下に向かっていくように書く筆づかいのことです。文字を書くと斜めになる癖のことではなく、書道における文字の書き方のことを言います。
【例文】
- 文字が斜めになるのを嫌がる人もいるが、書道には捺筆という斜めに書く書法がある。
- 彼は最近、捺筆の練習をしている。
「筆」という漢字を含む慣用句
弘法筆を選ばず(こうぼうふでをえらばず)
「弘法筆を選ばず」は、「文字を書くのが上手な人は、どのような筆を使っても上手に文字を書くことができる」ことを表し、本当の名人であれば、どのような道具であっても立派に使いこなすことができるという意味を持ちます。
「弘法」とは、書道の達人であり平安時代の僧である空海のことです。「弘法筆を選ばず」は、「弘法筆を択ばず」と書くこともあります。
【例文】
- 弘法筆を選ばずで、鉛筆一本でこれだけ表情豊かな絵を描き上げるとはさすがだ。
- そんなに道具選びに神経質にならなくても、あなたなら良い作品を作れるでしょう。弘法筆を選ばずです。
弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)
「弘法にも筆の誤り」とは、「書道の達人である弘法大師のような人であっても書き損じることはある」ことを表し、どのような名人であっても、予想もしないような失敗をする場合もあることを意味します。
「名人でさえも失敗するのだから、凡人が失敗しても気にする必要はない」と、失敗をなぐさめる表現として使われたり、「名人でも失敗することはあるのだから気を引き締めるべし」と、熟練した人の油断を注意する意味で使われたりします。
なお、「弘法にも筆の誤り」と「弘法も筆の誤り」は同じ意味です。
【例文】
- 弘法にも筆の誤りで、あの著名な講師が講演中に講演内容を忘れて無言になってしまった。
- 弘法にも筆の誤りなのだから、今回の失敗をいつまでも引きずることはないさ。
- 弘法にも筆の誤りですから、段取りを間違えることがないように注意してください。
筆舌に尽くし難い(ひつぜつにつくしがたい)
「筆舌に尽くし難い」とは、文章や言葉を使って、十分に表現することは難しいという意味の表現です。自分の気持ちが強すぎて言葉にできない場合や、風景があまりに美しすぎて言葉で言い表せない場合など、表現したい事柄の程度がはなはだしいときに使われます。
「筆舌」には「書かれた文章と話された言葉」という意味があり、「文章や言葉で表現できない」という否定の文脈で使いますが、「美しすぎる」のような肯定的なことと、「苦しすぎる」のような否定的なことのどちらにも使用します。
【例文】
- あの作品の魅力を教えてほしいと言われても、筆舌に尽くし難い。
- 彼に負けたときの悔しさは、筆舌に尽くし難いものだった。