「禁句」とは
「禁句(きんく)」には、以下のような意味があります。
- 和歌や俳諧(はいかい)などの約束事として、使ってはいけないとされる語句。
- 相手の感情を害したり、不快感をいだかせることのないように配慮して、使うことを避ける語句や話。
1の意味における「禁句」は、一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、文芸上の一定のルールとして存在しているためそれに携わる人々には常識でしょう。和歌や俳諧では、「禁句」を「止め句」とも言っています。
一方、2の意味の「禁句」は、冠婚葬祭の場面で使うことを避けている言葉など、広く生活の中に浸透しているものと、差別用語や放送禁止用語のように、公的な場や印刷物などで使うことを自粛したり、言い換えたりする言葉があります。
「禁句」の種類と使い方
この記事では、2の意味の「禁句」について、種類ごとに分けてご紹介していきます。
広く生活の中に浸透している「禁句」
この場合の「禁句」は、うっかり使うと人間関係に支障をきたす可能性があります。受験生や就活生に対する、すべる、落ちるはよく知られた「禁句」でしょう。
結婚式のスピーチでは、別れる、流れる、壊れるといった言葉を使ってはいけないとされています。また、度々、重々、皆々様といった重ね言葉もNGです。これは、言葉を重ねることが再婚につながると考えられているからです。
同様に葬儀でも、再び、繰り返し、引き続きなどの言葉は、不幸が繰り返されるとして禁じられています。
【例文】
- 自分の再婚がうまくいって幸せになった話を、従妹が姉の結婚式で話し始めた。さすがにそれは禁句だろうと、みんな渋い顔していた。
- 冬休みに北海道で思いっきり滑ってくると言ったら、母が、来年受験するお兄ちゃんがいるんだから滑るは禁句って怒られた。
- 社長、弔辞の中に「故人が生きていた時」とありましたが、直接的な表現は禁句とされていますので、「故人が生前」としておきました。
差別用語や放送禁止用語などの「禁句」
差別用語は、個人の出身や職業、肉体的・精神的な障害といった特性を表す言葉で、人を傷つけると考えられる表現のことです。
相手を蔑み、侮辱するようなニュアンスがあるとされ、メディアや公共の場での使用が問題となることが多くなりました。そのため、言い換え集がつくられたり、放送禁止用語が決められたりして、その言葉を使わないという自粛的態度がとられています。
しかし、言い換えた言葉が一般的になることで新たな差別を生むという問題も指摘されています。また、自粛の姿勢を「ことば狩り」と批判する立場の人たちも存在します。
【例文】
- 放送の途中で、「先ほど不適切な発言がありました。お詫びいたします」というテロップが流れていた。どんな禁句を言ったのだろう。
- 「板前」や「おまわり(お巡り)」が放送倫理規定に触れる禁句なんて知らなかった。放送関係者は大変だ。
普段の生活や会話での「禁句」
上記のようにルール化された「禁句」以外に、普段の生活の中にも「禁句」が存在します。相手との関係性を考えると使わない方がいいと思われる「禁句」もありますし、誰かの発言に対して「それは禁句だ」と感じる場合もあるでしょう。
【例文】
- 「パンがなければ、ケーキを食べたらいい」と言ったというマリー・アントワネットのエピソードは間違いらしい。でも、金持ちが貧乏人にそんなこと言うのは禁句だよね。
- 結婚して10年経っても子供ができない息子夫婦に、子供や孫といった言葉は禁句になっている。
- 失恋のどん底にある彼女に、その話は禁句だよ。
「禁句」の類語
「タブー」
「タブー(taboo)」は、口に出したり話題にしたりしない方がいいとされている事柄のことです。宗教上避けたり、禁止されたりする事柄にもよく使われています。イスラム教徒が豚肉を食べないというのは、よく知られたタブーでしょう。
「タブー」はまた、ある特定の間柄にある人間関係などで禁じられている言動のことも指します。「就活に失敗した息子に、従妹の就職祝いの話はタブーだ」というように使われます。
「忌み言葉」
「忌み言葉(いみことば)」は、宗教上、職業上、あるいは特定の場所や状況で使うことを避ける言葉や表現です。「禁句」の例で見たように、冠婚葬祭の場面では「忌み言葉」がたくさん存在します。
「不文律」
「不文律(ふぶんりつ)」は、「禁句」のような語句ではありませんが、特定の相手や集団の中で暗黙の了解事項とされていることです。「不文律」には、「禁句」を含む場合も多く、類語と言えます。
【例文】
- 担当者以外の者が業務に口を出さないという我が社の不文律は、閉鎖的でよくないと思う。
- 友人夫婦の間には、互いに干渉しあわないという不文律があるそうだ。