「時宜」とは
「時宜(じぎ)」とは、何かをするのにちょうどよい時期や状況、ちょうどよい頃合いという意味です。ただ時間的なことだけでなく、様々な条件がそろってチャンス到来といった状況や、その場の状況に照らしてちょうどよいという場合も含みます。
「宜」の字義
「宜」は、音読みで「ギ」、訓読みで「よろ-しく。よい。むべ。べし」と読みます。人に対して「よろしくお願いします」というときの「宜しく(よろしく)」のことですね。
「宜」の意味は、①「よい。都合がよい。ちょうどよい」、②「むべ。うべ。当然だ」、③「~するほうがよい。~べし」です。②の「むべ。うべ」は、どちらも古語で「なるほど。いかにも。もっともだ」というう意味です。
「時宜」には、「宜」の①の意味が反映され、時期、あるいはその時の状態がちょうどよいということを表しています。
「時宜」の使い方
「時宜」は、時宜に適う(かなう)や時宜を得るといった形で使われます。時宜に適うは、ちょうどよい時を意味し、時宜を得るは、ちょうどよい時をとらえるという意味です。
例文
- 父は、家族が仕事や人間関係で悩んでいるとき、いつも時宜に適ったアドバイスをくれる。
- プロジェクトが行き詰まっていた時に彼が提案したプランは、時宜に適ったものだった。
- 今度の管理職人事は、パワハラやセクハラで混乱していた職場にとって時宜を得た異動だと評価された。
- 災害支援は、変化するニーズに対して、時宜を得た対応が求められる。
「時宜」と「時機」
「時宜」とよく似た意味の言葉に「時機(じき)」があります。「時機」は、きざし、きっかけ、しおどきという意味を持つ「機」と「時」を組み合わせて、機会、チャンス、しおどき、タイミングを表します。使い分けは難しいので一例を挙げます。
野球のノーアウト満塁の場面などで、よくチャンス到来(時機到来)と言います。そして、同じ場面で打者がピッチャーの時は代打選手に交代することが多いですね。代打選手がヒットを打って得点を挙げると時宜に適った交代だったと言います。
このように周りの状況が整ったときが「時機」、その状況に自分が合わせることができる頃合いが「時宜」と言えるでしょう。後ろに「到来・を失う・を伺う」がつく場合は「時機」、「に適う・を得る」がつく場合は「時宜」とするのが見分け方の一つです。
「時宜」の類語
「潮時」
「潮時(しおどき)」は、「汐時」とも書き、潮が満ち引きする時刻を表すところから転じて、何か物事を始めたり、終わらせたりするのにちょうどよい時期という意味です。
どちらかというと、「時宜」は、物事を始めるときに使うことが多いですが、「潮時」は、物事を終わらせるときに使うことが多い言葉です。
【例文】
- 監督から、長年現役で頑張ってきたが、もうそろそろ引退の潮時だろう。これからはコーチとして後輩を指導してほしいと言われた。
- 妻とけんかしてしばらく口をきいていなかったが、そろそろ仲直りの潮時だと思う。
「機会」
「機会」は、何かをするのにちょうどよい時、チャンスという意味です。この言葉も始めるとき、終わるときどちらでも使うことができます。
【例文】
- 上司に無理やり飲み会に参加させられたが、上司の酔いがまわったところで抜け出そうと機会を伺っていた。
- 彼は、僕の大学の同期なんだ。ちょうどいい機会だから君に紹介するよ。
- 不況で給料は下がるし、ボーナスも出ない。いつ辞めようかと機会を伺っている。
「時節」
「時節(じせつ)」にも、ちょうどよい時期、チャンスという意味があります。ほかには季節や世の中の情勢・時勢といった意味も持っていて、桜の時節とか時節に合った商品などのように使います。
【例文】
- 今回の部長昇格レースでは同期のAに敗れたが、時節を待って挽回すると心に誓った。
- なかなか絵が世に認められず、妻には長い間苦労を掛けてきたが、ようやく時節到来、絵が展覧会で大賞を取り、個展の話も決まって、明るい未来が見えてきた。