「時節」とは
「時節」(読み:じせつ)は手紙などの文章で見かけることの多い表現ですね。まずは、「時」と「節」それぞれの字義から解説します。
「時」は過去から現在、現在から未来にかけて流れる一連の移り変わりを表しています。「節」は、もともと植物の茎などの継ぎ目や動物の骨の間の接合する部分を表す字です。継ぎ目という意義から、季節の変わり目や区切りとなる日、大事な祝祭日という意味も派生しました。
両方の字義から考えると、時の流れの移り変わりの区切りを指して、ある季節や一定の時間、その時の情勢や機会をイメージしているようですね。
「時節」の3つの意味
1.季節
「時節」は、季節や時候という意味で使われることがあります。花が咲いたり枯れたりすること、日の長さや寒暖差などで新しい季節が巡ってきたことを実感することもあるでしょう。自然の移ろいによって時間の変化を感じられることから、季節や時候を指すものと考えられます。
【使用例】
- 日差しが暖かくなり、桜の開花も発表されて、良い時節になりましたね。
- 暑さが和らいで、行楽に適した時節になった。
【手紙での使用例】
- 春は名のみのこの時節、寒さにはお気をつけくださいね。
- 時節柄、ご自愛くださいませ。
※「時節柄」の使い方については後ほど別の項目で説明します。
2.情勢
「時節」の字義から、その区切りとなる時期の情勢を表すこともあり、特定の時点での世の中の動きや動向を示しています。
「時世時節」(読み:ときよじせつ)という四字熟語は、時代ごとの世の中の動きやその時々の巡り合わせという意味です。「時世」も「時節」と似た意味を持っており、組み合わせることで「その時期の情勢や動向」という意義を強調しています。
【使用例】
- 時節をわきまえて慎重に行動しなさい。
- 国内外の時節に不安がある時に、投資をするのは無謀ですよ。
- 時世時節とは言いながら、主家筋に当たる方が自分の部下になると思わなかった。
3.時機・好機
「時節」には、時機や好機という意味もあります。つまり、適した時期に迎えた良い機会やチャンスということです。
四字熟語の「時節到来」(読み:じせつとうらい)では、まさに「好機」という意味で使われています。良い機会に恵まれている、かねてから待ち構えたチャンスがやって来た、非常にラッキーで嬉しいという気持ちを表しています。
【使用例】
- 苦節十年、時節を待っていた。
- 思いがけなく、Aさんが上司になり時節が巡ってきた。
- 時節到来、長年の望みが叶いそうだ。
「時節柄」について
ビジネス文書や改まった手紙の文面で、「時節柄ご自愛ください」という表現を見たことはないでしょうか。
「時節柄」(読み:じせつがら)は、「このような季節ですので」・「今の季節には」という意味です。「柄」は名詞に付く接尾辞で、「そのような時節にふさわしい状態」ということを表しています。
「自愛」とは、自分の体を大切にという意味。「ご~ください」と敬語の表現を含むことで、「お体を大切になさってください」と相手に丁寧ないたわりの気持ちを伝えられるのです。
「時節柄ご自愛ください」の使い方
「時節柄ご自愛ください」は手紙や文書の結びの文句です。冒頭に「拝啓」などの頭語をいれて、その後に時候の挨拶を入れますね。結語の「敬具」の前に「時節柄ご自愛ください」と入れて、時候の挨拶を入れた手紙を締めくくることができます。
拝啓 厳寒の候お変わりなくお過ごしでしょうか。
(本文)
時節柄ご自愛ください。
敬具
「厳寒の候」は、二十四節気の小寒や大寒の頃、つまり1月~2月(立春前日)にかけての最も寒い時期に使われる時候の挨拶です。
「寒さが厳しい時期に、風邪やインフルエンザにかからぬように無理をしないでくださいね。」と、その季節に合わせて相手の健康を気遣うニュアンスも含められますね。
「時節柄ご自愛ください」のNG例
ビジネス文書や改まった手紙の定型文に使える便利な言葉ですが、1つだけ使ってはいけない例があります。手紙を出す相手が病気やケガで療養中の場合は、別の言葉を使った方がいいでしょう。
すでに具合が悪い状態であるのに、「(現在の良い状態を保って)お体に気をつけて」という内容の文章を入れるのは適当ではありません。「ご回復を祈念しております。」というように、相手が元気になることを祈るような文章で言い換えて締めくくるようにしましょう。