「払拭」とは?
「払拭」は、(ふっしょく)と読みます。(ふっしき)と読んでも間違いではありませんが、一般的ではありません。この言葉を理解するために、「払」と「拭」の字義を見ていきましょう。
「払」は、音読みが(ふつ)、訓読みが(はら・う)。意味は、①はらう、はらいのける、なくなる。②夜があける。
「拭」は、音読みが(しょく、しき)、訓読みが(ふ・く、ぬぐ・う)。意味は、ぬぐう、ふく、ふきとる。
「払拭」は、この二字の字義そのままに、はらい、ぬぐうこと、すっかり取りのぞき、ぬぐい去ること、汚れなどをきれいに取り去ること、を意味する言葉です。
「払拭」の使い方
「払拭」は、辞書の意味だけをみると掃除のときに使う言葉のように感じられるかもしれませんが、物理的な汚れを取り去るという意味ではあまり使われません。
どのようなものが「払拭」の対象となるのかというと、ネガティブで抽象的なものについて多く使われます。ネガティブな感情(不安感、罪悪感、嫉妬心、敵愾心、不信感、怒り、悲しみなど)を消し去るときに「払拭」は最適な言葉です。
ネガティブな状況やイメージ(疑惑、悪評、弊害、噂など)も対象として用いられます。すべて「汚れ」の比喩として用いられるため、ポジティブなこと、よいことなどが対象として使われることはありません。
「払拭」の主語は多くの場合人ですが、物や状況がなにかを払拭するといったケースで用いられることもあります。
「払拭」の文例
- 初めて米国への出張を命じられた鈴木氏は、準備万端整えることで不安感を払拭し、胸を張って空港へと向かった。
- 人との和解を試みる場合は、ため込んだ怒りを払拭し、物事を公平に見る気持ちに戻れていることが大切だ。
- 自分に向けられた論文盗用疑惑を、なんとしても払拭したい。
- 新発売のトリートメント兼用ヘアダイ製品は、毛染めは髪の毛を痛めるというイメージを払拭した。
「払拭」の類語
「一掃」の意味と使い方
「一掃」は、(いっそう)と読みます。一度に払い去ること、すっかりと払いのけることを意味する言葉です。「払拭」に比べて「一度に、いっぺんに」というニュアンスが強い表現です。
「払拭」の対象が、ネガティブな感情やイメージなど抽象的なものであるのに対し、「一掃」の対象は、ネガティブ・ポジティブは関係ない中立的な意味のもの、具体的なものや人間などの生物と、幅が広いです。
「不信感を一掃する」「悲しみを一掃する」ということもできますが、「一掃」は、感情を扱うよりは、具象を対象とするほうが馴染みます。悲しみや怒りを一度に取り去ることは難しそうでもあるので、その場合は「払拭」を使った方がいいでしょう。
「一掃」の文例
- 古びた雑貨屋の混み具合に驚いたが、在庫一掃セールの日と知って納得した。
- 増水で道路が分断された集落の人々の不安は、救援隊の到着により一掃された。
- 街の一画で不法な商売をする人々がふみこんだ警察により一掃された。
「払底」の意味と使い方
「払底」は、(ふってい)と読みます。物がすっかりなくなること、物をすっかりなくすこと、物がきわめて欠乏することを表わす言葉です。「払底」、つまり「底を払う」と考えるとわかりやすいですね。「払拭」と異なる点は、対象が具体的なものや人であることです。
【例文】
- 小学校で備蓄していた非常用の食糧は、豪雨災害の避難所となった三日目には払底した。
- 人材の払底がいわれて久しいが、改善策が功を奏しているとは言い難い。