「迂闊」とは
「迂闊」<うかつ>とは、「うっかりしていて心配りが行き届かないこと」、あるいは「回りくどくて役に立たないこと」という意味です。多くの場合、前者の意味で用いられます。
「迂」とは
「迂」は、音読みでは<ウ>、訓読みでは<とお-い・まが-る>と読みます。複数の字義がありますが、「迂闊」の場合は、「疎い・鈍い」や「遠回りする・回りくどい」という意味です。
「闊」とは
「闊」は、音読みでは<カツ>、訓読みでは<うと-い・ひろ-い>と読みます。「疎い・ボンヤリとしている」や「遠く離れている」などを意味する漢字です。
「迂闊」の使い方
「迂闊」は名詞として用いられるだけでなく、形容動詞としても働きます。また、「迂闊さ」は「迂闊」から派生した名詞です。
【例文】
- 迂闊者の彼はパスワードを付箋に書いてパソコンに貼っていた。
- 教師の迂闊な発言はその生徒を傷つけた。
- 田んぼが心配だが、この暴風雨では迂闊に外に出ることも出来ない。
- 「とんだ思い違いをしていた」と、彼女は自分の迂闊さを呪った。
『人間豹』/江戸川乱歩
ー江戸川乱歩『人間豹』ー
「千万」<せんばん>は形容動詞について「甚だしい」<はなはだしい>という意味を添える働きがあります。「迷惑千万」や「卑怯千万」のようなかたちですね。ここでの「迂闊千万」は「うっかりするにも程がある」といったことを表しています。
なお、『人間豹』は名探偵 明智小五郎を主人公としたシリーズの中の一作で、女性の殺戮を繰り返す半獣半人の怪人物 恩田と対決するというストーリーです。
「迂闊」の類語
「軽率」
「軽率」<けいそつ>とは「軽はずみ・浅い考えで軽々しく何かをすること」です。「軽挙妄動」<けいきょもうどう>や「軽佻浮薄」<けいちょうふはく>とも言い換えられます。これらは「迂闊」とほとんど同じ意味です。
【例文】
- 今回は私の軽率な行動で周囲に迷惑を掛けてしまった。
- 同じチームで仕事をするのは初めてだが、彼の軽率さにはあきれるばかりだ。
「残念」
「残念」は、「物足りなく思うこと・心残りがある様子」や「悔しく思うことやその様子」というのが辞書に記載されている意味です。
しかし、若者言葉では「頑張ってはいるけれど結果が伴わない」「軽はずみな言動が長所を打ち消す」「短所が長所を覆い隠している」というニュアンスで用いられることがあります。本人の心残りや悔しさではなく、第三者から見た物足りなさや無念を表しているわけですね。
若者が使う「残念」は、「迂闊」に近い意味である場合があります。
【例文】
- 彼の残念な発言のせいで飲み会の場がしらけてしまった。
- 彼女は熱心に仕事に取り組んでいるが、要領が悪い残念な人だ。
「粗相」
「粗相」<そそう>の意味は複数ですが、その中に「軽薄なこと・不注意からミスを犯すこと・軽率な過ち」という意味があります。「迂闊な言動」などは「粗相」と言い換えることが出来るでしょう。
【例文】
- 大事な接待だから、クライアントに粗相のないように気をつけてくれ。
- 新人の粗相には多少は目をつぶることも必要だ。
「不覚」
「不覚」<ふかく>は複数の意味を持つ言葉ですが、「迂闊」の意味に近いのは「油断から失敗すること・しくじり」です。
【例文】
- あの選手はこのトーナメント中、一度も不覚をとらなかった。
- 不覚にも重要な会議中に居眠りをしてしまった。
「間抜け」
「間抜け」には「的外れ」という意味もありますが、「言動に抜かりがあること・愚かなこと」という意味もあります。後者は「迂闊」に通じるところがありますね。
【例文】
- 彼女の間抜けな質問はその場にいたみんなを苛立たせた。
- 彼の嘘を見抜けなかった自分の間抜けさに腹が立つ。