「棚からぼたもち」の意味
「棚(たな)からぼたもち」とは、思いがけない形で運に恵まれることです。「ぼたもち」は、「牡丹餅」と書きます。
由来は、棚の下で寝ていたら、その上に置いてあったぼたもちが落ちてきて、偶然にも開いていた口にすっぽり入ったという状況から来ています。この状況から、苦労せずに幸運が転がり込んで来るさまを例えたことわざです。
「棚からぼたもち」の使い方
「棚からぼたもち」は、「宝くじの1等が当たった」とか「懸賞で世界一周旅行に当選した」など、苦労することなく高額な物をもらったり、人生を左右するようなラッキーな出来事に出会ったりする場合に使うことが多いでしょう。
しかし、幸運がどの程度であるかは関係なく、「キャンセルがあってチケットを取れた」「仕事やお付き合いの中で、普段知り合う機会がない良い人を紹介してもらった」など、偶然にも本人にとって確実に良い状況になることにも使えます。
ただし、「道端で四葉のクローバーを見つけた」「購入時の代金がゾロ目だった」など、予想外のことであっても、ささやかな物事にはあまり使いません。
「棚からぼたもち」の例文
- キャンセルで季節限定のコフレ(化粧品)を入手できたのは、棚からぼたもちだった。
- 懸賞で車が当選するなんて、まるで棚からぼたもちだ。
- 職場の近くに格安で家を購入でき、まさに棚からぼたもちだと思った。
「棚からぼたもち」から派生したことわざ
「棚からぼたもち」を略した形は「棚ぼた」です。派生した同じ意味を持つことわざに「開いた口へぼたもち」「寝ていて餅(もち)」というものもあります。
また、「棚からぼたもち」から派生したことわざで、真逆の意味を持つものもあります。「棚からぼたもちは落ちてこない」「棚のぼたもちも取らねば食えぬ」です。いくら待っていても思いがけぬ形で幸運に恵まれることはないことを表しています。
「棚からぼたもち」曲名
「棚からぼたもち」が歌のタイトルに使われる例もありました。男性アイドルグループ『Kis-My-Ft2』の7人のメンバーから、目立たない方に属する4人のメンバーを選抜し『舞祭組』(ぶさいく)というユニットが作られました。
『舞祭組』のデビューシングルのタイトルが『棚からぼたもち』です。歌の内容は「目立つフロントメンバー3人と一緒に組んだおかげで、舞祭組である自分達4人がアイドルとして活躍できる」ことを、「棚からぼたもち」のような幸運に例えています。
舞祭組のプロデュースと『棚からぼたもち』の作詞をしたのは、当時の所属事務所の先輩、中居正広さんです。自虐的なイメージの歌詞でアイドルらしからぬユニット名であっても、4人の葛藤(かっとう)や目に見えない努力、それぞれのひたむきな性格がうかがえるような内容です。
「ぼたもち」と「おはぎ」
「ぼたもち」と「おはぎ」は似ていて、どのような違いがあるか疑問に思う方もいるかもしれません。実は両方とも同じ和菓子で、餅米やうるち米(一般的な白米)を蒸してからつぶして丸め、小豆餡(あずきあん)で包んでいます。
両方とも春と秋のお彼岸に供えるお菓子で、季節の花に合わせて名前が変わります。春に咲く牡丹(ぼたん)になぞらえて「ぼたもち」、秋の萩(はぎ)に合わせて「おはぎ」と呼ぶようになりました。
夏と冬の時期の「ぼたもち」「おはぎ」の別名
夏と冬の時期に作られる「ぼたもち」や「おはぎ」には別名があります。「ぼたもち」や「おはぎ」のご飯は、餅のように臼と杵でつかず、すりこ木などでつぶして作ります。
餅つきの音がせずに静かなので、近所の人にはいつ作ったのかわからないところから、「寝静まった中に停泊していつ来たのか分からない」ことに掛けて、夏に作ったものを「夜船」(よふね/よぶね)と呼ぶようになりました。
一方、冬に作ったものは「北窓」(きたまど)です。「北向きの窓からは月が見られない」ところから来ています。「月がない」と「餅つきをしない」を掛けて、花の名ではなく、言葉遊びのような名で呼ばれていました。ただし、現代ではあまり使われていません。