「興が乗る」の意味
「興が乗る」とは面白いと感じて夢中になることです。ここで使われている「興」は、面白いことや面白みの意です。余興や興味の「興」がまさにそれです。喜んだり、楽しいと感じてテンションが上がる様子に対して使われます。
同じ意味で「興が乗ずる」、「興が沸く」、「興に入る」という表現も使われます。
「興が乗る」か「興に乗る」か
「興が乗る」と「興に乗る」、同じような表現ですが一体どう違うのでしょうか。一般によく使われるのは「興に乗る」の方です。
それぞれの意味
辞書的な意味を比べてみましょう。「興が乗る」は紹介したように面白くて夢中になること。一方「興に乗る」は面白いと感じて何かをすることです。
前者は夢中になっている様子や状態に、後者は興味を惹かれてやってみるという行動に重心が置かれた表現と言えそうです。
使い方の違い
次は使い方です。それぞれ次のように使います。
- 興が乗る…血沸き肉躍る光景に興が乗る。
- 興に乗る…興に乗って歌い始めた。
もっとも、最近では区別なく使われることも多く、意識する必要はないでしょう。
「興が乗る」の使い方
- 彼は興が乗ると休みなく取り組むので、倒れる前に誰かが止めてやる必要がある。
- よく見ると口元が緩んでいる。当初は鼻で笑っていたおじさんも、自分で体験するうちに興が乗ってきたようだ。
- 「似顔絵を描いていたら興が乗ってきたので、つい色まで付けてしまいました。」
「興」が付くことわざ・慣用句
「興を醒ます」
「興を醒ます」とは興が乗って楽しい気分でいたが、それが白けてしまうことを指します。
興が乗っている時の面白い気分をお酒に酔っている時や夢見ている時に例え、面白みが失われる様子を醒めると表現しています。省略して「興醒め」、同じ意味で「興がそがれる」とも表現します。
「興をさかす」
「興をさかす」とは興味を催させる、心惹かれるという意味です。興味を掻き立て、面白そうだなと引き付けることを指します。
「乗る」の付くことわざ・慣用句
図に乗る
「図に乗る」とはいい気になって思い上がることや、なんでも思い通りになると思い込んで増長し、つけあがることです。
寛大だったり、甘かったりして何も文句を言わない相手にわがままをいうことを指します。ここでの図は思い通り、思うつぼという意味です。予想通りになることを図に当たるともいいますね。
調子に乗る
「調子に乗る」には2つの意味があります。1つは仕事などが順調に進むこと。「体の調子が良い」とか「いい調子で勉強が進む」と同じような意味です。「新事業が調子に乗る」のように使います。
もう1つはおだてられて得意になり、軽はずみなことをすることです。「調子に乗ってしゃべり続けた結果、機密事項を漏らした」や「調子に乗って間違えるな」といった形で使われます。お調子者の調子と考えるとわかりやすいでしょう。
大船に乗る
「大船に乗る」は元々は「大船に乗ったよう」という形でした。大きな船は小さな船に比べて難破したりする危険が少なく、安心感があります。そこから、信頼できる人に任せてあるので、心配なく安心していられる様子を表すようになりました。
また、この言葉をもじって、「泥船に乗ったよう」ということもあります。昔話『かちかち山』に出てくる泥船が沈んでしまったように、危険でリスクの高い状況を表します。この泥船は泥でできた船であって、泥を運ぶ船ではありません。
勝ち馬に乗る
「勝ち馬に乗る」は有利な方、勝った方に味方するという意味です。より多くの人が選んでいるものと同じものを選ぶ人が多いという現象はよく知られています。
心理学では斉一性の圧力、政治や経済ではバンドワゴン効果と呼ばれます。なお、負け犬を応援することをアンダードッグ効果と言います。
尻馬に乗る
「尻馬に乗る」はたいして考えもせずに他人に同調して、軽率なことをしでかすことです。四字熟語でいえば「付和雷同」が最も近いでしょう。尻馬とは馬の後方に座ること。誰かが乗っている馬の後ろに乗ることを指します。