「秋ナスは嫁に食わすな」の意味とは?
「秋ナスは嫁に食わすな」は、「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」と表記する場合もあります。このことわざの意味は次の3通りです。
- 秋のナスは美味しいので、憎らしい嫁にはもったいなくて食べさせない。
- 秋ナスは体を冷やすので、大切な嫁の体を気遣って食べさせない。
- 秋ナスは種が少ないので、子種が少なくなるのを心配して嫁には食べさせない。
いずれの意味においても、嫁に対する「姑(しゅうとめ)」の態度を表しています。嫁と姑の関係性によって意味が変わるわけですね。1からは嫁いびりをする姑、2からは嫁を思う姑、3からは嫁や跡取りを案ずる姑の姿を見てとれるでしょう。
「秋ナスは嫁に食わすな」の使い方
多くの場合、「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざは、上記の1の意味で使われます。3の意味は信憑性がないため、現代では用いる機会は少なくなっています。
【例文】
- 「秋ナスは嫁に食わすな」の通り、美味しいものは独り占め、趣味は嫁いびりという姑。ダンナの母親がどんな人なのか見極めてから結婚すれば良かったな。
- うちのお嫁さん、ナスだのトマトだの夏野菜ばかり食べて冷えないかしら。「秋ナスは嫁に食わすな」というくらいだから、体を温める物を食べれば良いのに。
- 「秋ナスは嫁に食わすな」というけれど、ナスのせいで子供ができないというのは迷信だよね。
「秋ナスは嫁に食わすな」の由来
語源となった歌とは?
鎌倉時代の『夫木和歌抄』(ふぼくわかしょう)に、「秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも」(粕漬けにした秋ナスを棚に置くのは良いが、嫁に食われないようにしよう)という歌があります。
辞書によっては、この歌が「秋ナスは嫁に食わすな」の語源であると説明しています。ただし、この歌の「よめ」は、ネズミを表す「嫁の君」の略、あるいはネズミの隠語の「夜目」です。
秋ナスとは?
秋ナスは秋の味覚のひとつです。秋にとれるナスは、夏にとれるものよりも水分が多くて皮が柔らかく、甘味や旨味が強いと言われています。これがことわざの1の意味の根拠です。
一方、中医学では、ナスは涼性(体にこもった熱をとる働き)の食品なので、気温が低い季節や体が冷えやすい人は控えた方が良いようです。2の意味は1783年頃に『安西随筆』で表されました。
他方、3の意味の出典は1699年の『諺草』(ことわざぐさ)です。しかし、種が少ない秋ナスを食べることと子宝に恵まれないことには科学的な関連はありません。
「秋ナスは~」のもともとの意味は1で、2と3は後世に付け加えられた意味と解釈するのが一般的なようです。
「秋ナスは嫁に食わすな」と似たことわざ
「鯒の頭は嫁に食わせ」
「鯒(こち)の頭は嫁に食わせ」ということわざに出てくる「鯒」は、カサゴの仲間で高級な白身魚です。鯒の頭は骨ばかりで食べられるところは少ないですが、一番美味しい部位とも言われています。
このことわざの2つの意味とそれぞれの例文は次の通りです。
- 憎らしい嫁には鯒の身はもったいないので、頭を食べさせる。
- かわいがっている嫁には美味しく希少な鯒の頭を食べさせる。
【例文】
- 夫の実家では自分たちは美味しい物を食べて、私には「鯒の頭は嫁に食わせ」のように残り物を食べさせる。
- 夫の母は優しい人で、遊びに行くといつも「鯒の頭は嫁に食わせ」のように温かい料理を出してくれる。
1は姑が嫁いびりをしている場合、2は姑が嫁を気遣っている場合を表しています。嫁姑の関係によって、ひとつのことわざに両極端な意味がある点で、「秋ナスは~」と同じです。
「秋魳は嫁に食わすな」
「秋魳(あきかます)は嫁に食わすな」は、秋の魳は美味しいので嫁に食べさせたくないという意味です。旬の美味しい物は嫁にやりたくないという、「秋ナスは~」の1の意味に共通しています。
このほかにも、「秋鯖(あきさば)は嫁に食わすな」や「五月蕨(ごがつわらび)は嫁に食わすな」も同じ意味です。
【例文】
姑は「秋魳は嫁に食わすな」の通り、私の留守を狙って美味しい物を食べているの!