「影」の意味
「影」は、「かげ(訓読み)」「えい(音読み)」と読み、主に以下のような意味があります。
- 光。
- 光によって(あるいは、光を遮って)できるその物の姿・形。
- (光に映した)その物自体の姿・形。
- 身代わり。
- 死者の魂。
現在は1~4の意味で使われることが多いので、今回は、これらの意味と使い方について具体的にご紹介します。なお、5の意味では「亡き祖母の影」のように使います。
「影」の使い方
1.光
「光」という意味で使う場合には、太陽・月・星などの光のことを「影」と言います。また、明かりとしてともす灯火(ともしび)の光も「影」です。
【例文】
- 今夜は月影がとても美しい。
- 周りに明かりは何もないが、星影が明るいので、外は真っ暗ではない。
- 遠くに灯火の影が見える。
2.光によって(あるいは、光を遮って)できるその物の姿・形
この意味で「影」を使う場合は、その物本体とは別にできるその物の姿・形を指します。身近なものには光の反射によって水面や鏡に映る姿・形や、物が光を遮ることによって光源の反対側にできる黒い形があります。後者は、私たちが普段よく使う「影」のことです。
【例文】
- 大木の後ろに隠れている彼の影が水面に映っている。
- 子どもたちにとっては、自分たちの影さえも遊び道具になる。
3.その物自体の姿・形
こちらは2の意味とは異なり、その物自体の姿・形を指します。ある物がなくなってしまったときに「影も形もない」というときの「影」は、まさにこの意味です。
また、面影(おもかげ)のような心の中に思い浮かべる姿のことや、本物に似せてつくった模造品のことも「影」と言います。
【例文】
- あんなにもたくさんの人がいたというのに、今は見る影もない。
- 亡くなった彼の面影が浮かぶ。
- とても好きな作品なので、本物は大切に保管し、部屋には影を飾っている。
4.身代わり
身代わりには、他人の代わりをすること、代わりとなっているその人自身という意味があります。この意味での「影」の使い方としては、「影武者(かげむしゃ)」という言葉が有名でしょう。
「影武者」とは、敵をだましたり、いざというときに身代わりになるために、大将と同じ身なりをした武士のことです。
【例文】
- 私の先祖には、影武者として亡くなった人がいる。
- 彼は大将の影である。
その他の使い方
他にも、比喩的な表現として用いることもあります。つきまとって離れないものややせ細っている姿、さらにぼんやりと輪郭のみが見える物の姿・形のたとえとして使います。また、好ましくない影響や悪いことが起きる前兆のたとえとしても使われます。
【例文】
- あの人の隣には、影のようにいつも彼がいる。
- 心配のしすぎで、彼女はやせ細って影のようになってしまった。
- 別れを惜しんで、あの人の姿が影になるまでいつまでも手を振り続けた。
- 死の影が確実に私たちに忍び寄っている。
「影」と「陰」はどう違う?
「影」と「陰」の使い方で迷ったことはありませんか?どういう意味で「かげ」を使うかによって使う漢字が決まります。
まず、「影」の意味は前述のとおりです。次に「陰」は、「何かに遮られて見えない所・光の当たらない所」という意味です。この意味から「陰の権力者」「陰がある人」のように「表には現れないもの・裏側」という意味でも使われます。
このことから、「ひかげ」という言葉を例に挙げると、「日の光」という意味で使う場合には「日影」と書き、「日の光が遮られている」という意味で使う場合には「日陰」と書くのが適切です。
「影」の類語
「影」には多くの意味がありますので、その意味ごとの類語を紹介します。
1.光
- 「日影」の類語:「日光」「日差し」「陽光」
- 「月影」の類語:「月光」「月明かり」
- 「星影」の類語:「星明かり」
- 「火影」の類語:「灯光(とうこう)」
2.光によって(あるいは、光を遮って)できるその物の姿・形
【影法師(かげぼうし)】
「影法師」とは、光が当たることによって、壁や障子、地面などに映った人の影のことです。「日光で地面に自分の影法師が映っている」というような使い方をします。
【シルエット】
「シルエット」は、光が当たることで浮かびあがる人や物の影を表す言葉です。他に、「輪郭」や「輪郭の中を黒く塗りつぶした絵」という意味もあります。「壁に猫のシルエットが映っている」のように使います。
3.(光に映した)その物自体の姿・形
【像(ぞう)】
「像」とは、人の姿や物の形のことで、「子どもの像が窓に映る」のような使い方をします。また、理想像などの心の中に描く姿やレンズを通る光が屈折・反射することによってできる物体の形も「像」と言います。
4.身代わり
【替え玉(かえだま)】
「替え玉」には、本人・本物のように見せかけて別の人や物を使うこと、またその人・物という意味があります。「替え玉入試で入学した学生が退学処分になった」というように使います。
【スケープゴート】
「スケープゴート」とは、他人の責任や罪を負わされて身代わりになる人のことです。古代ユダヤで、人々の罪を背負わせた生け贄(いけにえ)のヤギを荒野に放った儀式に由来しています。「彼はスケープゴートにされた」のように使います。