「またの名」の意味
「またの名」は、本名以外の名前・別名を表す言葉です。「またの名」は「又の名」と書くこともでき、「又」には「同じものに別の面があるさまを表す」という意味があります。
「私の名は〇〇、またの名を△△」と使われることからも想像できるように、「またの名」は本名を隠すための別の名前ではありません。本名を隠すための別名という意味では、「偽名」や「仮名」といった言葉を使う方が適切と言えるでしょう。
「またの名」の使い方
「またの名」は、本名を名乗った後に「またの名を~」といったかたちで使われることが多いようです。人に対してだけでなく事物に対しても使われます。
例文
- 彼女はまたの名をキャサリンというが、生粋の日本人だ。
- 彼の名前は五郎、またの名を次郎という。
- 彼岸花(ひがんばな)はまたの名を曼殊沙華(まんじゅしゃげ)という。
「またの名」の関連語
【一名(いちめい)】
「一名」は「いちみょう」とも言い、正式ではないもう一つの名前のことを言います。「ひとり」を丁寧に言う場合に「一名」とするのと同じ言葉です。「彼女は一名礼子という」のように使います。
【異名(いみょう)】
「異名」は「いめい」とも言い、本名以外の呼び名や本名とは別に付いた名前です。前者は「一月」を「睦月(むつき)」とも呼ぶことを、後者は「あだ名」をイメージすると良いでしょう。
「睦月は一月の異名だ」「彼は浪費が激しく、金食い虫の異名をとる」のように用います。
【俗称(ぞくしょう)】
「俗称」とは、正式な名前ではないものの、世間では通っている呼び名です。また、僧侶が出家する前の名前という意味もあります。「彼は俗称を力太郎という」といった使い方をします。
【通称(つうしょう)】
「通称」とは、正式でないものの、世間一般に通っている名前のことで、「通り名」とも言います。結婚した女性が職場で旧姓を使い続ける場合も「通称」と言うことができます。
「またの名」の英語表現
also known as/be also called
「またの名」を英語で言うと「another name」と表すことができますが、英文の中で「またの名を~」と使うときには、「also known as」や「be also called」といった表現も使われます。
また、「also known as」は省略して使われることもあり、その場合には「aka」「a.k.a.」とします。インターネット上では大文字で「AKA」「A.K.A.」とされることもあるようです。
【例文】
- She is also known as Hanako.(彼女はまたの名を花子という)
- He is also called Docter.(彼はまたの名を博士をいう)
- He is satoru, a.k.a. Kinjiro.(彼はさとる、またの名を金次郎いう)
alias
aliasは「またの名」の英語表現として使われることもありますが、「偽名」や「仮名」のような「本名を隠すための別名」という意味で使われることもあります。
そのため、犯罪者などの通称や偽名に対して使うとされることもありますが、犯罪者でない人が偽名を使う場合に「alias」を用いることもあります。例えば、芸名で活動する有名人などをイメージするとわかりやすいでしょう。
【例文】
- Anna, alias Hanna(アンナ、またの名をハンナ)
- When he does a job, he goes by the alias of Ichiro Sato.(彼は仕事をするとき、佐藤一郎という別名を使う)
「名」を用いた成句
名を残す(なをのこす)
「名を残す」とは、立派に活躍して功績を残すことによって、名前や良い評判が後々まで伝えられることです。一般的に「名を残す」は良い意味で使うものですが、悪い評判についても「名を残す」と使われることがあります。
しかし、そのような場合には「汚名(おめい)を残す」「悪名(あくめい)を残す」とするのが一般的です。「汚名」や「悪名」には「悪い評判」という意味があります。
【例文】
- 私の先祖には、この地域の発展に大きく貢献して名を残した人物がいる。
- 歴史に名を残した人々と実際に会って話をしてみたいというのが、私の叶わない願望だ。
名を捨てて実を取る(なをすててじつをとる)
「名を捨てて実を取る」とは、世間からどう見られるかという体裁よりも、実際の内容や質が良い方を選ぶことという意味です。「名」は表向きの名目や体裁を、「実」は内容や質を表します。「名を取るより得を取る(なをとるよりとくをとる)」とも言います。
「実(じつ)を取る」を「実(み)を取る」と読まないようにしましょう。
【例文】
- 彼は他の人からどう見られるかばかり気にしているから、名を捨てて実を取るという考え方ができない。
- 今の状況では、名を捨てて実を取ることが大事だ。