「苦渋」の読み方・意味
「苦渋」とは、苦しみ悩むことを表す名詞です。自分の思い通りに事が進まず苦しく辛い思いをすることを表す場合もあります。
また、「苦渋する」の形でサ行変格活用の動詞として用いることが可能です。この場合は、苦しい思いから渋面(じゅうめん)を浮かべている様子を表します。
「苦汁」との違い
同じ「くじゅう」という読み方を持ち、苦渋と混用されやすい言葉が「苦汁」です。これら二つは「苦」という共通の漢字を含みますが、表す意味は当然異なります。
「苦渋」が苦しくて辛い「思い」を表すのに対して、「苦汁」は苦い「経験」そのものを表すのがその違いです。元々は「苦みのある汁」という意味の言葉が転じて、現在用いられている意味になりました。
「苦汁をなめる」は、そういった苦い経験をするという意味の慣用句です。「なめる」のですから「汁」を用いるのもうなずけるのではないでしょうか。
「苦渋」の使い方(例文)
- 代表候補者の中から2名を外す責務を負った監督の顔には明らかに苦渋の色が浮かんでいた。
- 怪我を押して国際大会に出場する息子を、両親は苦渋に満ちた表情で見守るほかなかった。
- 国民の健康と国家の経済の両方を守らなければならない状況に、各国の首脳は苦渋していた。
はじめと二番目の例文において、「苦渋」は名詞として用いられています。この場合、「苦渋の色」や「苦渋に満ちた」のような表現で用いられやすいのも特徴です。
他では「苦渋の決断」や「苦渋の表情」といった表現もよく用いられます。いずれも「苦汁」と誤記してしまう恐れのあるものなので、注意を払っておくのがよさそうです。
「苦渋」の関連語
「苦渋」と意味の近い言葉
- 艱苦(かんく)…悩み苦しむこと。艱難辛苦(かんなんしんく)に同じ。
- 苦衷(くちゅう)…辛くて苦しい心の内。
- 憂苦(ゆうく)…うれえ苦しむこと。
- 患苦(かんく)…うれえ苦しむこと。
- 渋面(じゅうめん)…不快そうな顔つき。
- 苦慮(くりょ)…いろいろと心配し悩むこと。
関連語を用いた例文
- 我々スタッフ一同は、数多もの艱苦に耐えてようやく今回の結論を導き出したのだ。
- 怪我で大会に出られない本人やご両親の苦衷は、察するに余りあるというものだ。
- 今後、子どもたちが受けるだろう精神的ダメージの影響には憂苦せざるをえない。
- ダム建設が自然に及ぼす影響に患苦する住民たちの気持ちは分からないでもない。
- 別れ話を切り出した際に渋面を浮かべた彼女の反応が今も脳裏にこびりついている。
- 私たちが苦慮して下した決断をそう簡単に覆されては立つ瀬がないというものだ。
「苦渋」を英語で表すと?
「苦渋(名詞)」の英訳
名詞の「苦渋」を表す英訳には、実にさまざまなものがあります。それらの中でも比較的平易でよく用いられるものが、次の3つです。
- bitterness
- distress
- pain
これらはいずれも、心の苦痛や苦悩を表すものです。加えて、最初の"bitterness"以外の2つは肉体的な苦痛を表すこともできます。
「苦渋する(動詞)」の英訳
動詞の「苦渋する」を意味する英語表現には、次のようなものがあります。
- anguish
- agonoize
- suffer from psychological distress
これら3つの中で、最後の表現は「精神的な苦痛を味わう」と直訳できるものです。むろん、それが「苦渋する」の意味であることはいうまでもありません。
「苦渋の決断」の英訳
成句としてよく用いられる「苦渋の決断」や「苦渋の選択」。これらを含んだ表現の英訳は、次の通りです。
- make a tough decision(苦渋の決断を下す)
- make a difficult decision(苦渋の決断を下す)
- make a painful choice(苦渋の選択をする)
- make a wretched choice(苦渋の選択をする)
「苦渋の決断」に含まれる"tough"や"difficult”は、いずれもそれぞれ「厳しい」「難しい」という意味があります。「厳しい決断」や「難しい決断」とは、すなわち決断するのに苦渋するものだといえるでしょう。