「諸手」の意味・読み方
諸手は、左右の手を表すことばであり、両手とほぼ同義です。「諸手」のほかにも、「双手」と表記する場合があります。
また、もろもろの軍隊や隊伍のことを表す用法もありますが、現代ではあまり一般的ではないようです。この用法は主に古文で見られます。
「諸手」の読み方
「諸手」は「もろて」と読むのが一般的です。ただし、「もろで」と濁って読まれる場合もありますので留意しておきましょう。
また、島根県松江市の美保神社に伝わる「諸手船神事」では、「諸手」を「もろた」と発音します。「手」を「た」と読むのは、「手綱(たづな)」や「手折る(たおる)」など他の複合語でも見られます。
「諸」の字義
「諸」は、さまざまな意味を持つ多義語ですが、中でもよく使われるのが「二つの」と「多くの」という意味です。この意味で用いられている代表的な熟語には、諸人(もろびと)や諸刃(もろは)などがあります。
「諸手を挙げて」とは?
「諸手を挙げて」とは、無条件にまたは心から歓迎する様子を表した慣用句です。人を喜んで迎え入れる際に、諸手つまり両手を挙げる様子からこの言い回しが生まれたものと推察されます。
「諸手」の使い方(例文)
- 業界歴で四半世紀を超える先輩ならば、私たちは諸手を挙げて歓迎しますよ。
- 諸手突きは、かわされると上体が前に突っ込み過ぎてしまうという欠点がある。
- 諸手に幼子を抱えたまま、母親は追手から逃れようと川へ飛び込んでいった。
- 祖父は、日本古来より伝わる諸手伸しと呼ばれる泳法を私に披露してくれた。
二番目の例文にある「諸手突き」とは、相撲や剣道で繰り出される技のひとつです。いずれにしても、両手を使って相手に突き技を仕掛けるという点では共通しています。
また、最後の例文にある「諸手伸し」は、「もろてのし」と読むのが正しい読み方です。「伸し」は日本泳法のひとつで、横泳ぎの一種とされます。
「諸手」の類語・関連語
「諸手」の類語
- 両手…左右の手。十の意味で符丁的な意味でも用いる。
- 真手(まて)…両手。左右の手。全手と表記することも。
- 両腕(りょううで)…両方の腕。もろうでとも読む。
- 双腕(そうわん)…両方の腕。両腕。
これらの中で注目したいのが「真手」ということばです。この熟語に含まれる「真」には、二つ揃っていて完全である、または左右両方のという意味があります。
「真」の持つこの用法は他の熟語ではなかなか見られないものなので、注意が必要です。その他の「両」や「双」には、二つという意味があります。
「諸手」の関連語
左右両方の手を表す「諸手」と対になる、片方だけの手を表すことばには以下のようなものが挙げられます。
- 一手(ひとて)…一方の手。かたて。
- 片手…一方の手。
- 片腕…片一方の腕。
- 隻腕(せきわん)…片腕。隻手(せきしゅ)とも。
これらの中で注目したいのは「一手」の読み方です。「一手」は、「いって」と読むのか「ひとて」と読むのかによって表す意味が異なるからです。
また、「隻腕」に用いられている「隻」の字にも要注目です。この漢字には二つで一組の片方という意味があり、隻眼などの熟語でも用いられます。
「諸手」を英語で表すと?
「諸手」を英語で言い表す場合、多くのケースで「both hands」が用いられます。このフレーズで用いられている「both」は、二つあるうちの「両方とも」を表す形容詞です。
また、「諸手を挙げて」を表現したいときは「wholeheartedly」という言葉があてられる場合もあります。「心底から」という意味の副詞です。
例文
- The man was beginning to raise both hands.(その男性は、諸手を挙げようとしていた。)
- They wholeheartedly approved of our plan.(彼らは、諸手を挙げて我々の計画に賛同してくれた。)