「悪びれる」とは
「悪びれる(わるびれる)」は、「悪怯れる」と書きます。「怯れる(おくれる)」とは、気後れする、気持ちが挫けるなどの意味です。また、ここでの「悪」は、ほかの言葉と結びついて、度が過ぎている、悪い、心地よくないといった意味を添えます。
つまり、「悪びれる」とは、「気後れして恥ずかしがる。卑屈になる。未練がましくする」ことを表します。なお、古語で用いられている「悪怯る(わろびる)」も同様の意味です。
「悪びれる」と「悪ぶる」
「悪ぶる」の「ぶる」は、振る舞いや様子を表す接尾語で「利口ぶる」とか「もったいぶる」と同じです。また、この場合の「悪」は悪人や悪党を表しますから、「悪ぶる」とは「いかにも悪者のようにふるまう」ことを指します。
「悪びれる」は「悪ぶる」とよく間違われますが、全く違う言葉であることが分かるでしょう。
「悪びれる」の使い方
「悪びれる」は、後ろに否定の言葉がついて使われることが一般的です。
【例文】
- 不倫が原因で離婚騒ぎを起こしたAは、悪びれずに家庭裁判所の調停に出席した。
- 収賄容疑で逮捕された大臣が悪びれたふうでもなく、覆面パトカーに乗り込む様子が報じられた。
- 近所の人に、いたずらを叱られた子供たちは悪びれた様子もなく家に帰っていった。
- 仕事でミスをして悪びれた様子の彼をこれ以上責めるのはよくないと思う。
「悪びれる」の類語
「恥ずかしい」
現代で用いられる「恥ずかしい」は、以下のような感情を表しています。
- (自分の欠点やミスなどを意識することから)他人に顔向けできない気持ち。面目ない気持ち。
- (人前で緊張したりして)どのように振る舞っていいかわからない気持ち。照れくさい気持ち。
【例文】
- 期末試験の成績が学年平均以下だったのでとても恥ずかしい。
- 強豪校として名が通っていたのに無名の学校に大負けして、OBに恥ずかしい思いをさせてしまった。
- プレゼンで緊張して声が震えていたことを相手企業の担当者に笑われて恥ずかしかった。
- 気になっていた彼女から告白されて、うれしさと同時に恥ずかしさで赤面してしまった。
「やましい」
「やましい」は「疚しい/疾しい」と書き、「良心に恥じる気持ち。後ろめたい気持ち」という意味を持っています。自分の言動について、良心に恥じることがあるときの表現です。
【例文】
- 警察から疑われるようなやましいことは何もありません。
- 彼女に対してやましい気持ちがあったので、彼女と目を合わせることができなかった。
「悔やまれる」
「悔やまれる」は、「悔やむ」に自発を表す「れる」がついた表現です。「(過ぎたことに)後悔の念が起こってくること」を意味しており、「未練がましい」というニュアンスがあります。
【例文】
- もっと早く精密検査を受けていれば、こんなに苦しまずにすんだのに、今まで放置していたことが悔やまれる。
- 今でも悔やまれるのは、あの時、けんかしてでも彼の退学を止めなかったことだ。
「悪びれる」の反対に近い言葉
「厚かましい」
「厚かましい」は「恥を恥とも思わないこと。ずうずうしいこと」を表します。「厚顔無恥」という熟語も同じような意味です。
【例文】
- にわか雨のため、玄関先で雨宿りしていた家の人が傘を差しだしてくれたので、厚かましいとは思ったが借りることにした。
- ちょっと優しい態度を示したら、厚かましくメールアドレスを聞いてきた。
「ふてぶてしい」
「ふてぶてしい」は、「太々しい」と書きますが、「不敵不敵しい、不貞不貞しい」という当て字もあります。意味は「ずぶとい。ずうずうしい。大胆不敵」などです。
【例文】
- 仕事のミスに対して反省のかけらもない彼女のふてぶてしい態度に周りの者は怒りを感じていた。
- 警察に逮捕された容疑者は、報道陣のカメラに向かって、ふてぶてしい笑みを見せた。