「効力射」とは?
「効力射」(こうりょくしゃ)とは、火砲を用いた攻撃・火力支援において「効果的な射撃、相手に有効的な打撃を与える射撃」を意味する言葉(軍事用語)です。
「効力」という言葉は、「薬の効力が出てきた」「法的効力を発揮する」のように、「効果を及ぼす、はたらき、ききめ」という意味で日常でも使われていますね。それに「射撃」の「射」を合わせたものが「効力射」です。
基本的には火砲(砲、大砲など、比較的大きな弾丸を発射する兵器の総称)について使用される言葉であり、この記事でも「銃よりも大きく、個人では扱えないような重火器・大砲」を軸に「効力射」を解説します。
「効力射」という用語が使われる理由①
軍事にあまり詳しくない方の中には、「相手を攻撃するにあたって、効果的な射撃(砲撃)をするのは当たり前では?なぜ『効力射』などと言う必要があるのか?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
その理由のひとつとして、そもそも砲撃は「撃てば当たる」というものとは程遠いという現実があります。狙った目標に砲弾を命中させるためには、綿密な物理計算(弾道計算)と、正確な観測(弾着確認)が欠かせません。
そのため、砲撃には「敵に当てるため」ではない、「観測するため」「弾道を修正するため」の射撃もあり、これらと区別して「敵にダメージを与えるための本格的な射撃」を「効力射」と呼ぶのです。(※「関連語」もご参照ください)
「効力射」という用語が使われる理由②
「効力射」という言葉が使われるもう一つの理由は、砲撃には「命中」という言葉があまりそぐわないからです。なぜなら砲弾は爆発・破裂して近くにいるものを巻き込むことができる攻撃ですので、一点への命中のみが「効力」ではないのです。
むしろ、一点を狙い撃つ「狙撃」とは異なり、ある程度の範囲に連続した火力をばらまくことが砲撃に求められる基本的な役割です。極端に言えば、「十発中七発が目標の近くに弾着した」のであれば、(三発は外れていても)「効力射」と呼べるような場合もあります。
「当たった/外れた」ではなく、「一定の範囲に一定の(期待通りの)火力効果を及ぼしたかどうか」という観点から砲撃成果を表すのが「効力射」という言葉の役割といえるでしょう。
「効力射」の使い方
「効力射」は軍事用語ですので、日常会話で使うようなことはまずないでしょう。想定される使用シーンとしては、本物の軍隊か、あるいは大砲による戦闘が登場するシミュレーションゲームなどです。
「とりあえず撃つ」「撃ったら当たった」ではなく、観測や弾道計算を終えた上での、つまり「撃てばほぼ間違いなく目標近くに弾着すると想定される」状況での、「連続的な砲撃」を「効力射」と呼ぶのが使い方のポイントです。
用例
- 午前六時、〇〇軍は高地に展開した△△軍に対して効力射を開始した。
- 観測班から弾着誤差について報告が入った。砲身を右に5度修正したのち、本格的な効力射に切り替えていく。
- 前線部隊から我が砲兵部隊に火力支援要請が入った。しかし敵が火砲の有効射程外にいるため効力射が難しい状況だ。
「効力射」の関連語
「修正射」
「修正射」(しゅうせいしゃ)とは、「効力射」を行うための「発射された弾丸を目標に導くための、準備としての射撃」のことです。いわば、「効力射」の前段階といえるでしょう。
具体的には、まず少ない弾のみを使って着弾位置を正しく観測し、火砲の性能諸元などを考えた上で「遠い、近い」「右、左」などと砲手に指示を与え、できるだけ効果的な射撃となるよう調整するのが「修正射」のプロセスです。
「修正射」には非常に多様な技術が存在するためここでは紹介しきれませんが、どのような場合においても「一発でも少なく、一秒でも早く修正射を完了させ、効力射に移ること」が求められます。
「有効射程」
「有効射程」(ゆうこうしゃてい)とは、「効力射」が可能な最大距離のことを表す言葉です。稀に「攻撃が届く距離のこと」と誤解されることがありますのでご注意ください。
特に砲撃のような無誘導の兵器では、天候(風向きなど)の自然的要素を受けやすく、効力射が可能な距離(=有効射程)はその都度異なります。
一方、ミサイルなどの誘導兵器は、誘導技術が高まっていることもあり、誘導可能でさえあれば状況を選ばず効力射が可能です。この場合、そのミサイルの「飛翔距離、誘導圏内」=「有効射程」となります。