「相好」とは?
「相好」は(そうごう)と読み、元は仏教用語です。仏教の経典には、仏の身体の特徴を美しく気高い三十二相、さらにそれを細分化した八十種好として三十二相八十種好(さんじゅうにそうはちじっしゅごう)と称し、詳しく説明されています。その言葉を略したものが「相好」です。
「相好」の意味は、上述したように、仏の身体に備わる、美しく立派な特徴のこと。例としては、仏像や仏画に描かれている「身体手足全てが黄金色に輝く」「身体から四方に光明を放つ」(後光のこと)などが挙げられます。
「相好」のもう一つの意味は、上記の仏教用語から転じた、「人の顔つきや表情」です。仏の特徴は身体全体を対象としましたが、人間を対象とした「相好」は顔や表情のみを指すことに留意しましょう。
「相好」の使い方
仏の身体的特徴を意味する「相好」と、人間の顔の相や表情を意味する「相好」は、全く異なる使われ方をします。それぞれ項目にわけて解説していきましょう。
仏教用語の「相好」
仏教用語の「相好」は、専門的な用語ですので派生した意味で用いられることはありません。まれに比喩的な使われ方をすることはありますが、ほぼ、「仏」の身体的な特質の説明としての用語となります。
上述したような、光の輝きという現象のみならず、肉体的な特徴などもありますので、その例をいくつか挙げてみましょう。
- 足裏が平坦である。
- 足指手指が長い。
- 肩が丸みをおびている。
- 歯が40本あり、歯並びもよい。
【文例】
仏の相好で僕にも唯一あてはまるのは、「歯並びがよい」という点くらいだなあ。
一般的な「相好」
「相好」を一般的な言葉として使うときは、「相好を崩す」という言い回しで使われることがほとんどです。「崩す」は「変化する」ということですが、この場合は「笑顔に変化する」という意味を表しています。
それまでの表情からにこやかな表情に変化することで、怒りや悲しみの表情に変化するときには使われません。「相好を崩す」の使い方のポイントは、この「変化」にあります。
「相好を崩す」の文例
- いつも不愛想な祖父が、孫の顔を見る時だけは相好を崩して機嫌もよくなる。
- いつもは厳格な校長だが、野球部が都大会で優勝したという報告に相好を崩して喜んだ。
「相好を崩す」と似た表現
「破顔する」の意味と使い方
「破顔(はがん)する」は、顔をほころばせ笑うことを意味する言葉です。言葉の意味は、「相好を崩す」と同様に、顔の表情を変化させることなのですが、その変化も同じく「笑顔」への変化のみに用いられます。
「破顔」には、「破顔一笑」という四字熟語もあります。「一笑」は、大笑いではなく、ちょっと笑うこと。したがって、「破顔一笑」は、顔をほころばせてにっこり笑う、というほどの意味になります。
【文例】
いつも不機嫌な父が、弟のおどけたしぐさに破顔したので驚いてしまった。
「頬を緩める」の意味と使い方
「頬を緩める」は、(ほおをゆるめる)と読みます。頬の緊張が緩む、すなわち、表情が柔らかくなり、「相好を崩す」「破顔する」と同様に、笑顔への変化のみに用いられます。
緊張していた表情が安堵で緩んでにこにこと笑むこと、結んでいた口元が緩み笑うこと、などを意味します。
【文例】
教室で生徒たちの受験結果の連絡を待っていた担任教師は、次々と入ってくる合格の知らせに頬を緩めるのだった。