「会敵」の意味
「会敵」は、「かいてき」と読みます。その意味は、「敵性存在を発見し、戦闘行為を始めること」です。基本的には「敵に会う」と書く通りの意味と考えてよいでしょう。
「会敵」は軍事・ミリタリー用語ですので、日常的な語彙の中に登場することはまずありません。軍隊に所属する方以外では、サバイバルゲームや、戦争を模したゲームを楽しまれる方が使う専門的な用語と言えます。
なお、「えてき」や「あいてき」という読みは誤りですのでご注意ください。
「会う」だけではなく「戦う」意味に注意
「会敵」という言葉の中には、「戦う」という意味が含まれていることに注意しましょう。なぜなら、「会う」という言葉には「お互いが相手を認める」意が含まれており、敵同士が会うからには、多くの場合「戦いが始まる」こととイコールだからです。
そもそも「敵」という言葉に「戦いの相手」という意味があらかじめ内包されていることを考えれば、「会敵」に戦うことの意味が含まれていることもうなずけるのではないでしょうか。
なお、なぜ「敵と出会う」のかといえば、通常は「敵を探し求めた」(索敵をした)からであり、なぜ敵を探し求めるのかといえば、交戦することが前提となっていることがほとんどです(敵と面と向かっているのに戦わないことは、逆に危険)。
「会敵」の使い方
「会敵」という言葉は、基本的には「交戦する準備を整え、いずれは交戦するだろうという前提のもとで敵に出会うこと(そして、実際に交戦が始まること)」を指して使います。
そのため、非武装で中立に立っている民間人などがテロリストに襲撃を受けることなどは「会敵」とは呼びません。
「敵に出会う」→「戦闘開始」はごくごく当たり前の因果ですから、個人対個人でも、部隊対部隊でも、軍対軍でも、幅広く「会敵」と言うことができます。
奇襲された場合も「会敵」?
「奇襲」「不意打ち」などの場合、攻撃を受けた側にとっては「(敵と)出会う前」「予想していなかった遭遇」ですので、その時点では「会敵」とは言えません。
しかし、敵の最初の一撃で全滅せず、奇襲してきた敵を認識し反撃体制をとれるのであれば、その時点で「会敵」と言えます。
用例
- 1939年〇月〇日の0200時、両軍は日本海上で会敵した。
- 会敵した場合に備え、自動小銃の安全装置を解除しておく。
- 補給部隊がこのルートを通ると、敵偵察部隊と会敵が予想される。ルートを変更すべきだ。
- 前線の偵察部隊から敵襲の緊急報告が入った。迎撃部隊はただちに会敵点(かいてきてん:会敵した場所)に向かえ。
「会敵」の関連語
コンタクト
「コンタクト」(contact)とは、「接触する、こつんとぶつかる」という意味の英単語ですが、軍事・ミリタリー用語としては「敵と接触すること」という意味があります。
相手を敵と認識した瞬間に「コンタクト」と呼ぶことができ、「会敵」と同様、多くは戦闘行為の開始を意味します。
ただし、「コンタクト」は実際に敵と出会う以外も、「レーダーコンタクト」(レーダー上で敵性存在を認識すること)のようにも使用されます。
エンゲージ
「エンゲージ」(engage)は広く「(状況などに)拘束する」という意味の英単語ですが、軍事的な場面では「交戦する」という意味を持ちます。「交戦状態に拘束される」と考えれば良いでしょう。
特に、銃による戦闘行為や戦闘機による近代的戦闘において「相手が攻撃可能な射程内に入ること(そして、攻撃段階に入ること)」を「エンゲージ」と呼びます。
もし相手を見つけていても、その相手が数十キロ先など攻撃射程圏外にいる場合は、交戦不可能ですから「会敵」ではありませんし「エンゲージ」でもない、ということですね。
タリホー
「タリホー」(Tally-ho)とは、元は猟師の言葉で、山に入った猟師が獲物を見つけて猟犬をけしかける「ほーほ!」という叫び声のことを指します。
ここから転じて、敵性存在を(基本的には目視で)発見し、「敵がいるぞ」「行け行け!」と兵士をけしかけることも「タリホー」と言うこともあります。(ただし、軍事用語としては俗語的です)
敵を見つけて戦闘開始する、と言うニュアンスが「会敵」とよく似ています。しかし、「タリホー」は相手がこちらを見つけているかどうか、そのまま交戦状態に入るかどうかは問いません。