「筆致」とは?意味や使い方をご紹介

芸術作品などにまつわる評論に触れて、「軽やかな筆致が…」「洒脱な筆致で…」といった表現を見聞きしたことはないでしょうか。多様な媒体に使われる言葉ですのでこの機会に覚えておきましょう。ここでは、「筆致」という言葉の意味や使い方を英語表現も含めてご紹介します。

目次

  1. 「筆致」とは?
  2. 「筆致」という言葉の使い方
  3. 「筆致」を英語で言うと?

「筆致」とは?

「筆致」(ひっち)とは、「文字・文章・絵画などの書きぶり、筆の調子、ふでつき」という意味の言葉です。「タッチ」(touch)と言ってもほぼ同じ意味です。

例えば絵画を例にとると、一流の画家の筆づかいと、初めて絵筆を握った子どもの筆づかいのあいだには、当然ながら、技術的な面でも感性的な面でも大きな差が生まれます。それが「筆致」の差です。

さらに、絵筆(および絵描き道具)の使い方を熟知した者のあいだでさえ筆づかいはそれぞれ異なっており、その「筆致」の差異がその作者やその作品の特性・個性を生み出すということができます。

筆致の「致」とは?

「筆致」の「筆」のことはすぐわかっても、「致」のほうは少々意味が取りにくいかもしれません。

「致」の字は「送り届ける」「つかわす」「つたえる」「する(の丁寧語)」などいくつかの意味を持ちますが、「筆致」の場合は「おもむき、ありさま」の意味です。

「風致」(ふうち:自然界のおもむき、あじわい)という熟語を知ると、「筆致」の意味もイメージしやすくなるかもしれません。

「筆致」という言葉の使い方

「筆致」という言葉を使う場合、次の三つの使い方を押さえておきましょう。

  • 文字の筆致(力強い文字、優美な曲線の文字など)
  • 絵画の筆致(印象派的な描き方、色彩的技巧など)
  • 文章の筆致(単語選び、行論の独特さ、情景を喚起させる感性的文章など)

書道や油絵のようにある程度視覚的に「筆致」に言及できる場合もあれば、「難解な哲学書を軽やかな筆致で紹介する」のように内容や印象のニュアンスを「筆致」と呼ぶこともあります。

視覚的な「筆致」について言及する場合にも、最終的にはそれがもたらす「おもむき」について語るのが「筆致」の本義です。そのため、上記以外に、例えば作曲などの分野でも「軽やかな筆致」といった表現が用いられることがあります。

基本的に肯定的な文脈で用いる

「筆致」という言葉そのものは中性的な「書きぶり」のことです。しかし「致」=「おもむき」という時点で心を動かされる何らかの味わいがそこに発生していることが多く、基本的には肯定的な文脈での使用例が多くみられます。

ただし「筆致がない/ある」といった使い方はせず、「華やかな筆致」「リアルな筆致」のように何らかの修飾文句とともに使うことを基本として覚えておきましょう。

例文

  • かの書道家の書は達筆と評判だが、実際に生で見るとその引き締まった筆致は見事なものだ。
  • 後期のゴッホの筆致には、迷いを感じさせない清廉な力強さがある。
  • 新人作家としてデビューした〇〇氏の筆致は、女性的な優美さと男性的な堅固さが同居しているとして各方面から絶賛されている。
  • その手紙の筆致からは、彼女の豊かな教養がにじみ出ている。

「筆致」を英語で言うと?

「筆致」を英語で言いたい場合には、「筆づかい」と「おもむき(味わい、風情)」をうまく意識して、以下のような表現を用いましょう。

  • brushwork
  • burshstroke
  • style of writing(painting)
  • touch

日本語の「筆致」と同様、「master」(卓越した)、「light」(軽い)、「clever」(器用な)といった修飾語を共に使うと良いでしょう。

例文

  • Klimt's ethereal brushstrokes are unforgettable once you see them.(画家クリムトの霊妙な筆致は、一度見たら忘れない)
  • What readers are looking for is a light-touch, easy-to-understand novel.(読者が求めているのは軽い筆致で描かれた、わかりやすい小説だ)


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