「情景」とは?
「情景(じょうけい)」とは?と問われたら、なんと答えるでしょうか?たいていの人は、「景色でしょ?」と返すかもしれません。正解ではありますが、厳密に言えば、その答えには欠落した部分があります。「情景」は、単なる景色のみを意味する言葉ではありません。
「情景」とは、人の心を揺さぶり動かしたり、なんらかの感情を引き起こさせる景色、状況、場面を意味する言葉です。
「景色」という意味だけでは足りないと上述しましたが、その足りない部分が、この「景色とからみあう人の感情や心情」という点なのです。「情景」をより深く知るためにも、「情」と「景」という漢字の意味をそれぞれ後述します。
「情」の意味
「情」は、音読みが(じょう、せい)、訓読みが(なさ・け)で、意味は次のように多義にわたりますが、すべて人の感情が含まれています。
- 心、気持ち
- 思いやり、情け
- 異性間の愛情
- ありさま、様子
- 味わい、趣き。面白み
「情景」の「情」の意味は、4の「ありさま、様子」が該当しますが、他の意味においても、「人の心、感情」という意味では、すべて「情景」の意味にかかわるものと言えましょう。
「景」の意味
「景」は、音読みが(けい)、訓読みは無し。意味は4つありますが、「情景」の「景」に該当する意味は、「ありさま、様子、景色」です。
上述のように「情」にも同様の意味がありますが、共通の意味を二重に用いて強調しているというよりは、「情」の(人の心や情け)という意味も多分に入ったうえでの「情景」だと理解するといいでしょう。
「情景」の使い方
まず、「情景」が、自然の風景、景色だけを対象としないことを認識しましょう。場面や状況なども「情景」として扱われます。次に、美しさや趣きがあることも「情景」に含まれますが、恐ろしい場面、汚い風景など、すべての状況も対象となります。
人の感情は多種多様であり、それらを呼び覚ましたり引き起こしたりする風景や場面としての「情景」もまたさまざまなものと言えるのです。
このようになんらかの感情が引き起こされる「情景」ですが、その感情がその人の記憶や体験からくる場合と、まったく関係のない光景によって人間としての感情が湧いてくる場合と二通りあります。
「情景」の文例
- 家族連れが公園で遊ぶ情景に、自分の子ども時代が蘇り、懐かしさに浸った。
- 住宅取壊し現場の殺伐とした情景が、山田君に過去の災害によるトラウマを蘇らせた。
- 水平線に陽が沈む瞬間を目にした時、その壮大な情景に自然の偉大さを感じて心が震えた。
「情景」の類語
「光景」の意味と使い方
「光景(こうけい)」は、大きくわけて次の3つの意味を持ちます。③の意味は、現代日本語ではほぼ使われません。
- 目の前に広がる景色
- ある場面の状況、情景
- 日の光
「情景」の類語としては、②の意味の「光景」が該当します。とはいえ、一般的には①の意味の、たんに目に映るものを表す場合がほとんどです。
「情景」との違いは、定義として「人の心を動かしたり、なんらかの感情を引き起こすような」という部分がないことです。「光景」は、人の心とは切り離されたものとして理解しましょう。
【文例】
初めて目にしたオーロラは、夜空の神秘的な光景として、忘れられないものとなった。
「風景」の意味と使い方
「風景(ふうけい)」は、次の2つの意味を持つ言葉です。
- 目前に広がる景色、眺め
- ある場面の情景、様子
「光景」とほぼ同義といえる「風景」は、やはり物理的に目に映る景色や状況を表しています。「野球の練習風景」とは言えても、「野球の練習情景」とは言わないことからも、その違いは明らかです。
【文例】
北海道の旅を終えて、いまも目に蘇るのは、ただひたすら広い大地の風景だ。