「渋面」の意味や読み方とは?
「渋面」は、不愉快そうな顔つきや不機嫌そうな顔つきという意味の言葉です。多くの場合、「渋面をつくる」などの形で用いられます。「じゅうめん(音読み)」と「しぶつら(訓読み)」という読み方を持つのが特徴です。また、時には「しぶづら」と読む場合もあります。
このように音訓両方の読み方をする熟語は、次の二つのタイプに大別されるのが一般的です。一つめは、「牧場(ぼくじょう/まきば)」のように、どちらの読み方をしても表す内容に大差がない場合です。
もう一つのタイプでは、「風車(ふうしゃ/かざぐるま)」のように読み方によって表す内容が変わります。「渋面」は、前者のタイプにあたりますので、読み方によって意味内容が変わることはほぼありません。
「渋」の字義とは?
「渋」には、主な意味として「味が渋い」と「物事がすんなりと進まない」という意味があります。では、なぜ「渋面」が不愉快そうな表情を意味するようになったのでしょうか。
たとえば、渋いお茶や渋い柿を口にしたときの様子を想像してみてください。きっと、眉間や額にしわをよせた顔つきになっていることでしょう。
まさにこのときの表情が不機嫌なときの表情とそっくりなのです。そんなわけで、実際には何かを口にしたわけではないのに「渋」という漢字が用いられるようになりました。
「面」の字義とは?
「面」には、実にさまざまな意味がありますが、「渋面」で用いられているときに表しているのは「顔」です。転じて、顔つきや表情という意味でもしばしば用いられることがあります。
「渋面」の場合、渋い表情というのが元々表している意味です。顔や顔つきの意味で用いられている「面」を含む言葉には、他にも猿面(さるめん)や面食い、喜色満面(きしょくまんめん)などがあります。
「渋面」を用いた例文
- 私の不用意な発言に対して、彼はあからさまな渋面(じゅうめん)をつくった。
- 彼は、私が説明している間も終始渋面(じゅうめん)のまま表情を崩すことはなかった。
- そんな渋面(しぶつら)ばかり見せてないで、いつもの明るい笑顔に戻ってはくれまいか。
- 何といっても私の印象に残っているのは、鏡に映った自分自身の渋面(しぶつら)であった。
「渋面」の関連語とは?
- 仏頂面(ぶっちょうづら):不愛想な表情。不機嫌な表情。
- しかめっ面(しかめっつら):眉や額のあたりにしわを寄せた不快そうな表情。
- 苦渋(くじゅう):苦しくつらい思いをすること。
- 苦々しい(にがにがしい):非常に不愉快なさま。
- 苦虫(にがむし)を嚙み潰した(かみつぶした)よう:ひどく不快そうな表情。
- 眉(まゆ)をひそめる:納得いかなかったり、不愉快であったりして眉間にしわを寄せること。
- 憮然(ぶぜん):思い通りにいかず不満な様子。
これらは、いずれも不機嫌や不快感を表すものとして使われます。はっきりと言葉には表さないものの、明らかな「ノー」の意思表示であることも多い言葉です。
「関連語」を用いた例文
- いつまでもそんな仏頂面でいたところで何の解決にもつながりませんよ。
- 彼女のしかめっ面を見れば、私たちの提案に彼女が乗り気でないのは一目瞭然だ。
- 彼らの苦渋に満ちた表情から、今回の決断が本意ではないことがうかがえる。
- 新しく赴任した所長のことばを私たちはただ苦々しい表情で聞いているだけだった。
- 圧倒的に不利な条件を提示された担当者は、苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。
- 自分の取り分が思いのほか少ないことを知ると、彼は急に眉をひそめた。
- 私は、彼らが仕事にダメ出ししているのを憮然たる思いで聞いているほかなかった。
「渋面」を英語で表すと?
「渋面」を英語で表したものの中でも代表的なものが、「grimace」や「frown」です。両方とも似たような意味を持っていますが、もちろん違いもあります。
前者は、「感情のみならず苦痛などに顔をゆがめるとき」にも使われるのが特徴です。それに対して後者は、怒りや不安な気持ちから「眉をひそめる」様子をイメージすると分かりやすいでしょう。