「鬼の目にも涙」とは
「鬼の目にも涙」とは、「冷酷無慈悲で、まるで鬼のような人でも、時には同情やあわれみの心を覚えて、目に涙する様子もある」という意味です。「恐ろしい鬼でも、目に涙を浮かべる気持ちを持ち合わせている」という鬼に例えたことわざです。
「鬼」とは
「鬼」とは、「醜悪(しゅうあく)な形相と恐ろしい怪力をもち、人畜に害をもたらす想像上の怪物」のことです。また、「無慈悲。冷酷」や「強くて恐ろしい。勇猛」などの意味も持っています。
怖くて、恐ろしい象徴になっており、いろいろなフレーズや語と結びついて、ことわざや熟語を形成しています。
「鬼の目にも涙」の由来
「鬼の目にも涙」は、その由来が江戸時代にまでさかのぼると言われています。当時、代官や高利貸は、情けや憐れみもなく、非情で悪の権化とされていました。
しかし、時には、非情な代官も年貢の取り立てに情をかけたり、高利貸が憐れみの心をもって借金の証文を破ったりした時に、鬼を例えとして使われた言葉です。
そのような由来から、今では鬼のように怖い人でも物事に感動して、涙を流す場面に使われています。
「鬼の目にも涙」の使い方・例文
- 生徒からは厳しく恐いイメージの先生でした。しかし、卒業式で涙を流している姿は鬼の目にも涙でありました。
- チームの優勝に際して、監督が涙を浮かべている。鬼の目にも涙と人は言うけれど、本当は優しい監督でした。
- 厳しい父親でした。でも、東京へ旅立つ日にうっすらと目に涙を浮かべていた。鬼の目にも涙であると感動しました。
- 厳しい社長もついに退任した。会社を去る時に見せた涙は鬼の目にも涙であった。
「鬼の目にも涙」の類語
- 鬼の中にも仏がいる:鬼と呼ばれる情け知らずの悪人の中にも、仏のような優しい心を持った人もいるということ
- 鬼も頼めば人食わず:好きなことでもこちらから頼むともったいぶってしてくれないということ(鬼に食べてくれとこちらから頼めば、かえってたべない)
- 鬼の血目玉にも涙:鬼の性質の悪い血目玉でさえも涙するということ
「鬼」を使ったことわざ
「鬼の首を取ったよう」
「鬼の首を取ったよう」とは、「たいしたことでもなのに、大変な手柄や功名を立てたように喜ぶこと」という意味です。鬼を退治して首をとるという例えです。
【例文】
- 彼は軽微なことなのに鬼の首を取ったようにいばっている。
- 子どもは簡単な宿題を終えたことを鬼の首を取ったように母親に報告している。
「鬼の霍乱(かくらん)」
「鬼の霍乱」とは、「いつも非常に健康な人が珍しく病気にかかること」という意味です。恐ろしくて丈夫な鬼でさえも病気になるという例えです。
【例文】
- あの丈夫な男が病気になるなんて。鬼の霍乱だな。
- あの豪傑が入院してしまった。鬼の霍乱と言わざるを得ない。
「鬼の居ぬ間に洗濯」
「鬼の居ぬ間に洗濯」とは、「気兼ねする人やこわい人のいない間に、やりたいことを行ったり、息抜きすること」という意味です。恐い鬼のいない間に息抜きをするという例えです。また、洗濯は気晴らしという意味も持っています。鬼の留守に命の洗濯でもするのでしょうか。
【例文】
- 恐い親方もいない。ゆっくりと休もう。鬼の居ぬ間に洗濯だな。
- 鬼の居ぬ間に洗濯気分だ。両親が旅行に出かけ久しぶりの気軽な生活が始まる。
「鬼に金棒」
「鬼に金棒」とは、「強い者がさらに強さを加えること」という意味です。ただでさえ強い鬼に金棒を持たせるという例えです。
【例文】
- チームには来月から有力選手が加入する。これで鬼に金棒だ。
- メジャーリーガーを獲得できれば、球団にとって戦力面で鬼に金棒となる。