「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味
「鬼の居ぬ間に洗濯」とは、目上の人や怖い人などがいない間に、気兼ねせずに思いっきりくつろいで自由にふるまう、という意味です。
「鬼」とは、角と牙があり人を食うと言われる想像上の怪物です。しかし、「鬼の居ぬ間に洗濯」における「鬼」はこうした怪物の事ではなく、厳しい人、怖い人を意味します。会社の上司、学校の先生、チームの監督、家族だったら舅や姑など常々怖いと思っている人の例えとして使われています。
また「洗濯」というのは衣類の洗濯ではありません。「心の洗濯」、「命の洗濯」を意味します。すなわち、日ごろの労苦から解放されて心の疲れを洗い落とし、心身ともにリフレッシュする、ということです。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の例文と使い方
- 同居している義母が、二週間のヨーロッパ旅行に出かけた。鬼の居ぬ間に洗濯で、私もママ友とランチしたり、妹と飲みに行ったりさせてもらっている。
- 来週は部長も課長も出張で不在だそうだよ。有給休暇取っちゃおうかなぁ。鬼の居ぬ間に洗濯だね。
- お隣のご主人、恐妻家だってもっぱらの噂だけど。奥さんが仕事に出かけたら、鬼の居ぬ間に洗濯とばかりにパチンコに出かけちゃったよ。
普段怖いと思っている人、目上の人などがいない間に、気ままに過ごし、気持ちをさっぱりさせている場面で使われていますね。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の類語
「鬼の居ぬ間に洗濯」は、地方によって少し違った表現があるようですので、ご紹介します。
- 鬼の留守に豆を煎る(島根)
- 鬼の留守に豆拾い(長崎)
- 鬼の留守に昼寝(青森)
「鬼の居ぬ間に洗濯」の英語表現
- The mouse goes abroad where the cat is not lord.(ネコが領主でない国では、ネズミも外出する)
- While the cat is away, the mice will play.(ネコのいない時、ネズミが遊ぶ)
「鬼の居ぬ間に洗濯」の諸外国での表現
- 亭主留守なら女房のんびり(パキスタン)
- ネコがいない時はネズミが王になる(カンボジア)
- ネコはよその家に、ネズミはテーブルに(フィンランド)
- 家の中でネコの気配がしない時には、ネズミが踊る(ポーランド)
- ネコが去るとネズミは家中をわがもの顔(ジャマイカ)
ネコとネズミという例えが多く使われていますね。一方、中国では次のような表現が用いられています。
- 閻王不在 小鬼翻天(閻魔王の留守に、手下の鬼が暴れる)
中国の表現においては、羽をのばす方に「鬼」が用いられていますね。
「鬼」が登場することわざ
「鬼」は、角を生やし、大きく裂けた口に鋭い牙、長くとがった爪を持つという怪物です。恐ろしいもの、邪悪なもの、残忍なもの、などというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。こうした「鬼」を主題にしたことわざは多くあります。その中でも、現代でもしばしば耳にすることわざをご紹介します。
- 鬼に金棒(ただでさえ強い者や組織などが、さらに強力になること。最高の条件が整うこと)
- 鬼の霍乱(おにのかくらん:普段頑健な人が、珍しく病気にかかった時に用いられる言葉)
- 鬼の念仏(冷酷で残忍な人が、うわべだけ慈悲深くみせかけること。柄にもなく殊勝にふるまうこと)
- 鬼の首を取ったよう(それほどでもないことを、大きな手柄を立てたように大喜びし、得意な顔をすること)
- 鬼の目にも涙(冷酷な人でも時には情けを感じて、慈悲の心を起こすことがあるという例え)
- 鬼も十八(醜い者や武骨な者なども、十八歳ごろのお年頃になれば、それ相応に美しくなり、男女の情を解するようになるということ)