「ご時世」の意味
「ご時世」(ごじせい)とは、「時世」の頭に丁寧語としての「ご(御)」がついた表現で、「(この頃の)世の中、時代」という意味です。「御時世」としても構いません。
漢字の通りシンプルに「(今の)時と世」と意味を覚えてよいでしょう。ただし、「じせい」には同音異義語が多数ありますので、漢字の間違いにだけご注意ください(例:辞世、時勢など)。
なぜ「ご(御)」がつくのか?
「今の世の中」というために、なぜ接頭辞「ご(御)」がつくのでしょうか?はっきりとしたことはわかっていませんが、理由としては次の二説が考えられます。
ひとつは、「御天気(おてんき)」「御国(おくに)」「御免(ごめん)」のように、自分の力ではどうしようもないような大きな外界の概念や、他人が関わる事柄について、敬いをもって言い表しているという説。
そしてもうひとつは、どうにもならないものに対して皮肉をこめているという説です。「御託(ごたく)」や「御前(おまえ)」などが該当するかもしれません。
「ご時世」の使い方
ネガティブなニュアンスで使われることが多い
「ご時世」という言葉はそのまま「今の(最近の)世の中」という意味で使われますが、特徴的なのは、ネガティブなニュアンスで使われるケースが多いということです。
例えば、「いい人ばかりが損をするこんなご時世」や、「まさか今のご時世にこんないいことがあるなんて」といった形です。いずれも、「ご時世」の情況はあまり良くないという意味合いであることがわかりますね。
個人の力では改善のしようもないような、社会や世相全体にわだかまる重々しい空気感、悪習、閉塞感などを映し出すのが「ご時世」であると捉えるとよいでしょう。
【例文】
- こんなご時世にしては珍しく、〇〇社の売り上げは好調で、地域に雇用を生み出し続けている。
- 花粉症がつらくてマスクをしているだけなのに、インフルエンザが流行中のご時世では、どこへ行っても病人扱いされる。
「暗黙の了解」という側面も
「ご時世」という言葉は、暗黙の了解、すなわち「言わなくてもわかるだろう」「それとなく具体的な原因・根拠をぼかす」という意図で使われることもあります。
原因を明確に言及したり、責任の所在をはっきり特定するような論及は、時に人間関係の摩擦を招き、角が立つ発言となってしまうことがあります。
その際、「世の中」という大きな枠組みに原因をぼかすことにより、波風を立てずに「今の自分(たち)」のありかたに言及が可能です。
ただし、原因・根拠を明確にすべきなのに、「みんなそうだ、社会全体がそうなっている」と、自説の強調に「ご時世」が使われるケースもありますので、主観に寄りすぎないように使い方にはご注意ください。
【例文】
- 誰しも多少なり悪いことをして金を稼いでいるだろう。ほら、なんせ、このご時世だからな。
- このご時世、結婚していても指輪をしないなんて普通だよ。
「ご時世」を英語で言うと
「ご時世」を英語で言う場合には、まず、「day」や「time」など、日時に関係する言葉をあてはめる方法があります。
ただし、「day」「time」単独では単純な日時の意味となってしまうため、定冠詞「the」などをつけたり、「in this」「pretty」で修飾するなどして、「まさに、この」ご時世というニュアンスを強調しましょう。
「day」「time」などの代わりに、「world」(世、世界)としたり、「trend」(トレンド、時勢)とするのもよく、何を時世と呼ぶかによって、多様な単語が選択できます。
例文
- In this time, everyone is struggling.(こんなご時世じゃ、みんな苦労している)
- She lives with firm self-confidence against this harsh world.(彼女は、この世知辛いご時世でも、確固たる自信をもって生きている)