「わる」とは
前後の文脈がなく、「わる」だけを仮名で表記されていると文字の変換に悩んでしまいますね。ここでは、次の二つの「わる」について、それぞれ説明していきます。
- 割る
- 悪
1.「割る」<わる>とは
「割る」のおもな意味・使い方
「割る」<わる>には多くの意味がありますので、おもな意味について見ていきましょう。「割」という漢字はもともと「二つに分かれる」「二つに切り裂く」などを表す文字です。「割る」は次のような意味へと細分化していきました。
- 物をいくつかに分けて離す。いくつかの部分に分ける。
- まとまっているものを分裂させる。
- 配分する。分け与える。
また、「割」の字には日本語でだけ用いられる意味があります。これらは「割る」の次のような意味にも反映されています。
- 除法を行う。わり算をする。
- ある限度を下回る。
- 境界線からはみ出す。
- 希釈する。
【例文】
- 「ストーブ用に蒔を割ってくれないか?」「教室を割って展示スペースを作ろう」
- 「野球部を二つに割る騒動が起きた」
- 「有志のメンバーに仕事を割ろう」(割り振ろう)
- 「683割る21は、およそ32.5だ」
- 「イベントの募集定員を大きく割った」(割り込んだ)
- 「大関は土俵際で粘っていたが、ついに土俵を割った」
- 「今日は焼酎をお湯で割って飲もう」
「割る」を含む慣用句の意味・使い方
「割る」を使った慣用句も多くあります。辞書を引くと、これらの「割る」の意味は上の「割る」の意味と併記されていますが、慣用句として用いられるケースが多いので、フレーズとして覚えても良いでしょう。
- 間を割る:間を空けるように押し分ける…(例)一触即発の二人の間に割って入った。
- 膝を割る:両の膝を離す…(例)コンビニの前では少年たちが膝を割ってしゃがんでいた。
- 腹を割る:本音を隠さずに言う…(例)酒の席は上司と腹を割って話す良い機会だ。
- 口を割る:白状する…(例)証拠を突きつけられて、彼女はようやく口を割った。
- ホシを割る:犯人を突き止める。…(例)捜査も進み、ホシが割れるのも時間の問題だ。
2.「悪」<わる>とは
「悪」<わる>の意味・使い方
「悪」<わる>とは、形容詞の「悪し」<わるし>の語幹部分で次のような意味があります。
- わるさ。悪戯。
- わるいことをする人。不良。悪党。
- (他の語の前に付いて)わるい、不快な、度を越した、などの意を表す。
【例文】
- 「彼はそんな悪をするヤツじゃないよ」「近所の野良猫はとんだ性悪だ」
- 「あの男はこの辺りで一番の悪だ」「おまえみたいな悪は見たことがない」
- 「いくらなんでも悪ふざけがすぎるぞ」「そんなにちゃんぽんしていると悪酔いするよ」
「ちょい悪」とは
2000年代前半から、メンズファッション誌のキャッチコピーとして登場した「ちょい悪」<ちょいわる>という言葉を覚えていますか?トラッドやコンサバといったかっちりとした服装を、革ジャンやサングラスなどで着崩したファッションのことです。
おもに中年男性のファッションを表しており、このような装いの中年男性を「ちょい悪おやじ」と呼んでいました。また、「ちょい悪おやじ」は大人ならでは遊びを知っているような、少し言動が悪い男性を指すこともあります。
この場合の「悪」は、上の1や2に相当します。遊び心のある、抜け感のあるといったニュアンスを「悪」という言葉で表現しているのでしょう。なお、「ちょい悪」は、「ちょいワル」「ちょい不良」と表記されることもあります。
「悪」<わる>と「悪」<あく>
「悪」を<あく>と読む場合、辞書には「倫理観や法律に反する行動や考え」あるいは「(名詞の前について)荒々しく強い、畏敬の年を抱かせるさま」といった意味が記載されています。
<わる>も<あく>も、主要な意味は「わるいこと」です。しかし、<あく>は「善」と照らし合わせてわるいというニュアンスです。
慣習的なイメージですが、<わる>は<あく>よりも軽い悪事、どことなく憎めない悪事を表すのではないでしょうか。「ちょい悪」が<ちょいあく>でないのは、<あく>はファッションのキャッチコピーには適さなかったからだと考えられます。