小者の意味
「小者」(こもの)は、「小物」と書く場合もあります。古来から使われてきたこともあり、若い人や小柄な人、雑用などをこなした職業に就いていた人のこと、など様々な意味があります。これらのうち、現在でも使われているのは、「⑤取るに足らない人」です。
①年が若い人・小柄な人
「小者」の「小」という字が、幼いや若い、背丈などが小さいことを指すところから、年が若い人・他よりも年少の人や小柄な人を表しています。
②商家などで身分の低い奉公人
江戸時代までは、商家の身分の低い奉公人を「小者」と呼びました。主に年季奉公で住み込みで働いていた丁稚(でっち)、つまりは雑用や使い走りをする子供や、こまごまとした仕事をした下男などが「小者」に当たります。
③武家で雑役に従事した人
鎌倉時代から江戸時代にかけて、武家屋敷に仕えて様々な雑役(ざつえき・本業以外の雑用)を担当した身分の低い雇い人も「小者」と言います。若党(わかとう)や草履取りなども同じ意味の言葉です。
室町時代までは戦乱が多く、「小者」は、戦場で主人の馬の前を走って付き従うこともありました。江戸時代に入ると大きな戦がなくなり、1年契約で更新しながら武家に雇われるようになります。
「小者」にはそれぞれ担当があり、草履取り以外にも伝令や荷物の運搬、屋敷の掃除、籠を担ぐ役などがありました。仕事内容は世襲制で、代々引き継がれます。武士とは違い、主人に忠誠を誓う義務はない場合も多かったということです。
④目明・岡っ引き
「小者」は江戸時代の目明(めあかし)という職業を指すこともあります。目明は江戸では岡っ引き(おかっぴき)とも呼ばれています。
仕事内容は町奉行所の同心の配下となり犯罪者の捜索を手助けする役割を担っていました。給料は同心から支払われ、町人であっても公的な使用人として認められていたのです。現在でいうと、警察官に近い存在ですね。
時代劇のドラマに『銭形平次』があります。正義感の強い神田明神下の平次親分や、平次をライバル視する三ノ輪の万七も、目明ですから「小者」です。
⑤取るに足らない人
身分が低い雇い人のことを指すことから派生し、「小者」という言葉をある集団や分野の中で下っ端にあたる取るに足らない人を表す表現として使う場合があります。
実力や手腕もなくうだつの上がらない人、勢力がなく地位が低い人、能力に欠ける人などを示すあまり良い意味でない言い回しです。
「小者」の使い方
現代で使用頻度の高い「⑤取るに足らない人」という意味に絞って、「小者」の使い方を紹介します。いわゆる「特徴のない大したこともない人物」を表す時に使われるでしょう。
「小者扱い」(特別に価値のない人物として粗略に扱われる)、俗語に近いですが、「小者感」(取り立てて優れている感じがしない人)、「小者臭い」(大した人でない雰囲気)などといった表現の仕方も見られます。
文例
- 地味で大人しい人なので小者扱いしたら、取引先の社長で焦った。
- 立派な人に見せようとしても、そこはかとなく小者感が漂うんだよな。
- 心が狭く小物臭い言動をしている。
「小者」の類語・「雑魚」
「⑤取るに足らない人」の意味に近い語句に「雑魚」(ざこ)があります。大して商品価値がない魚の総称で主に小魚を指しています。
それを人の性質に転じて、大したことのない人物という意味でも使われています。「小者」とも用いられ方が似ています。
「雑魚」は、漫画やゲームのセリフの中で「ザコ」とも書かれることがあるでしょう。「雑魚キャラ」のようにゲームや小説、漫画などの登場人物のうち、極端に弱い者や、主人公と敵対する組織の中で比較的戦闘能力が低い者に大して使われる場合もあります。
【文例】
- この界隈は雑魚みたいなどうしようもない人が多い。
- クリボーはマリオシリーズの雑魚キャラで、踏むだけでやっつけられる。
「小者」の対義語・「大物」
「小者」の対義語は「大物」(おおもの)です。「大者」とは表記しないので注意しましょう。
単に大きな物や釣りなどで得た大きな獲物の意味の他に、特定の分野で有能で力のある人物のことを表します。並々でない素晴らしい力量を持った人を示すこともある言葉です。
【文例】
- 彼は国際大会で力を発揮する大物です。
- スケールが大きく世界で通用する大物だ。