「ほとぼり」とは?
「ほとぼり」は、漢字では「熱」(熱り、とも)と書き、その意味は以下の二つです。
- 熱気。余熱。ほとほり。
- 感情・興奮などの名残。また、事件などのあとの世間の関心やうわさ。
1の意味はそのままエネルギーや感覚としての「熱さ」のこと、2の意味はそこから派生した比喩や現象としての「熱さ」のことです。「熱中」「熱演」などの言葉に意味が近いといえますね。
現代では1のような単純なエネルギーの意味で「ほとぼり」が使われることはほとんどなく、大抵が2の意味で用いられています。
「残っている熱」のニュアンス
「ほとぼり」は(1、2のどちらの意味でも)、今まさにエネルギーが注がれ続けている燃焼・保温状態にある熱ではなく、「残っている熱(余熱)」というニュアンスを持っています。
例えば、火にかけていて湯が沸騰中のやかんは「ほとぼりがある」とは言いません。火から離して、室温(常温)中に放置しているやかんが持っている熱が、「ほとぼり」です。
「ほとぼり」は「じきに冷める(常温に戻る)熱」のことであると覚えておくとよいでしょう。
「ほとぼり」の使い方
「ほとぼりが冷める」
「ほとぼり」は、現代においては「ほとぼりが冷める」という用例が多く、何らか事件・出来事で上昇した人々の興奮・関心・注目度(比喩としての熱)が沈静化するという状態を指して使います。
「人の噂も七十五日」と言う通り、どれほどの熱狂や騒ぎもいずれは時間とともに静まっていきます。どのような感情も、永続はしないと言われています。
情報化が進んだ社会では、毎日のようにセンセーショナルなニュースが飛び込んできますから、なおさら「ほとぼりが冷める」のは早いかもしれませんね。
「上がる」「高まる」とは言わない
「ほとぼり」は上で説明したように「残っている熱」のニュアンスですので、ほとぼりが「高まる」「上がる」といった言い方はしません。「暖まる」なども同様です。
「ほとぼりが冷めかけてところに、もう一度、熱が上がるようなことが起きた」場合は、「再燃した」といった表現が適当でしょう。
例文
- 世間を騒がせた怪人二十面相は、このところ姿を見せていない。前の事件のほとぼりが冷めるまでは大人しくしているつもりなのだろう。
- 論文不正の疑いで研究所を追放され、世間からも厳しく糾弾された彼は、事件のほとぼりが冷めたころ、無実を訴える自叙伝を出版した。
- サウナに長時間入りすぎたせいか、経験したことのない身体のほとぼりに苛まれ、その夜はほとんど眠れなかった。(※熱気という意味)
「ほとぼり」を英語で
「ほとぼり」は簡単に言えば「熱」のことですから、英語では「heat」「hot」「fever」など熱に関する言葉を使うのが良いでしょう。日本語同様、心理的な「熱」についてもこれらの単語が使用可能です。
感情・興味・関心に関わる「ほとぼり」を強調したいのであれば、「passion」「excite」「cult」などの単語でも構いません。
「ほとぼりが冷める」としたい場合には、「cool down」(冷える)などの単語を使う方法のほかに、「熱」に対して「down」「off」「out」などの単語を当てることでも、「残っている熱」のニュアンスを表現できます。
例文
- After taking a shower, I waited for my body to cool down on my bed.(シャワーを浴びたあと、私はベッドの上で身体のほとぼりが冷めるのを待った)
- He appeared again in public when the excitement of the incident dies down.(彼は事件のほとぼりが冷めるのを待ってから、再び公の場に姿を現した)