「希薄」の意味
「希薄」にはもともとの意味と、そこから派生した意味があります。二つの意味どちらもしっかりと抑えておきましょう。
もともとは「液体」に使う言葉
「希薄」のもともとの意味は「液体の濃度が薄いこと」です。理科の授業で塩水や炭酸水などの水溶液を作った経験は誰しもあると思われますが、液体(水溶液)に含まれる成分の濃度が薄いことを「希薄」と言います。
本来は液体の濃度に対して使う言葉ですが、「ガスの濃度が希薄」というように、気体の濃度に対しても使うことがあります。一方で、固体の密度に対してはあまり「希薄」は使いません。
派生して「概念」一般にも使う
「希薄」はさらに、液体だけではなく、「人間関係が希薄」というように、目に見えない概念に対して、「薄い」「乏しい」「積極性がない」という意味で使うこともあります。
近年では「液体の濃度」よりも、「概念」に対して「希薄」を使うことが増えています。
「希薄」の例文
- 誰だ、こんな希薄なビール買ってきたやつ。
- キャッシュレス化が進み、硬貨や紙幣の価値が希薄となりつつある。
- 存在感が希薄である。
- 組織と働き手の関係の希薄化は、極めて危険である。
- 見かけの割に、中身が希薄である。
- 根拠が希薄過ぎて説得力に欠ける
- 法順守の意識が希薄。
「希薄」の対義語
濃厚
「希薄」の対義語は「濃厚」です。「希薄」と同様に、液体の密度だけではなく、「人間関係」や「可能性」などの概念に対しても使うことのできる言葉です。
「希薄」の同音異義語
気迫
「希薄」の同音異義語として「気迫」(「気魄」とも)があります。「気迫」は「激しい気力」「強い精神力」を意味します。
「希薄」と「気迫」、同じ音ではありますが、「希薄」が形容動詞的な使い方をするのに対し、「気迫」は名詞として使うことが多いので、口頭ではそこで見分けていきましょう。
「希薄」の「希」って何?
「希薄」の「希」は「のぞむ」と読み、「のぞむ」からは「希望」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。ですが、「希」の本来の意味は「かすか、まれ」、すなわち「珍しい」という意味です。
「希」を「まれ」という意味で使う例には、「希少」や「希代」があります。「希望」も、「まれなこと」が転じて生まれた言葉です。
また、「希」は「稀」と書く場合もあります。「稀」には「のぞみ」の意味はありませんが、「希」がつく言葉で「まれ」という意味がある場合は、「希」を「稀」で書き換えることもできます。よって「希薄」は「稀薄」と書いても問題ありません。
「希薄」の英語
「希薄」の英語には、"thin"、"washy"、"watery"、"weak"、"slight"、"tenuous"があげられます。"thin"、"washy"は「うすい」という意味、"watery"は「水っぽい」という意味です。"washy"にも「水っぽい」という意味があります。
"weak"は「弱い」、"slight"は「わずか」という意味です。"tenuous"には「乏しい」「わずか」「うすい」という意味がありますが、これは「内容」や「関係」「根拠」など概念に対して使います。
一方、対義語である「濃厚」の英訳には、"strong"、"potent"、"robusut"、"rich"、"thick"などが挙げられます。
「希薄」のまとめ
「希薄」は、最近では物質の濃度よりも、概念の薄さを表す言葉として使われることが多い言葉です。特に、「現代社会では、人間関係が希薄となりつつある」といった批評や評論として聞く機会が多いかもしれません。
あまり良いイメージで使われる言葉ではありませんので、人間性が希薄、やる気が希薄、などと人から言われることのないよう、気をつけたいものですね。