「孫にも衣装」とは?意味や使い方をご紹介

「まぁ、可愛らしい。孫にも衣装ですね。」一見褒め言葉にも思われるこの言葉。しかし実際は褒め言葉ではありません。また「孫にも衣装」ではなく、正しくは「馬子にも衣装」です。今回は誤用されることの多い「馬子にも衣装」について、詳しく解説します。

目次

  1. 「孫にも衣装」は誤り
  2. 「馬子にも衣装」とは
  3. 「馬子にも衣装」の例文
  4. 「馬子にも衣装」の対義表現
  5. 褒め言葉としてつかえる四字熟語

「孫にも衣装」は誤り

「まごにも衣装」の「まご」ですが、最近「孫」と表記されている例を多く見受けます。しかし、これは間違いです。正しくは「馬子」と書きます。「馬子」とは、職業あるいは身分の呼称です。

「まご」を「孫」だと思い込んでいるために、大切な場面で「馬子にも衣装」という言葉を使い、恥をかいてしまうことがあるかもしれません。「孫にも衣装」は誤りです。「まご」は「馬子」であるということを確認しておきましょう。

「馬子にも衣装」とは

「馬子にも衣装」の意味

「馬子にも衣装」とは、どんな人間でも外面を飾れば立派に見えることのたとえです。謙遜、あるいは冷やかしとして用います

「立派に見える」ことのたとえならば褒め言葉なのでは?と思われるかもしれません。しかし、「馬子にも衣装」は、本来であれば立派には見えない人が、今日は特別な装いをしているために立派に見える、ということを表すため、決して褒め言葉ではありません。

「馬子にも衣装」という言葉が失礼にあたる場合があります。身内やごく親しい間柄以外では使わないようにしましょう。

「馬子」とは

「馬子(まご)」とは、馬が交通手段だった時代に、馬に人や荷物を乗せて運ぶ仕事(運搬業)をしていた人のことです。当時、その職に就くのは身分の低い人であったと言われています。

つまり「馬子」とは、普段は粗末な着物を着て仕事に従事している人、身分が低いためこぎれいな身なりができない人を表しているわけです。

現代においては「馬子」という職業も身分も完全になくなりました。そのためか、「まごにも衣装」についても、「孫」が正しいと思う人が増えたようです。

「馬子」が蔑まれた背景

室町時代から発展してきた物流は、江戸時代になるとさらに活性化し、馬および人員(馬子)の確保が急務となりました。そのため幕府は、宿場周辺の住人に、強制的に運搬業を担わせます。

しかし、負担の大きさに対し報酬はごくわずかであったため、人々は次第に労働の代わりに金銭を納めることで職を免れるようになります。そこで幕府は人員を補うために、浮浪者の中からある程度身元が明らかになっている者を選び、運搬業に従事させました。

そのため、「馬子」の中にみすぼらしい格好の者が多くいることはいうまでもなく、中には旅人を恐喝し金品を巻き上げるなどの犯行に手を染める者も現れるようになりました。

もともとの身分の低さに加え、こうした悪行が「馬子」のイメージを悪化させ、蔑まれるようになったということです。

「馬子にも衣装」の例文

  • 幼い頃はやんちゃだった息子も、スーツを着ると一人前に見えるな。馬子にも衣装とはよくいったものだ。
  • 社長主催の食事会に招待されたので有名ブランドのワンピースを新調した。馬子にも衣装で少しは上品に見えるかな。
  • 成人式で見かけた幼馴染の着物姿があまりに綺麗だったので、つい照れ隠しで「馬子にも衣装だね」と言ってしまった。

「馬子にも衣装」の対義表現

「馬子にも衣装」にたとえられるように、誰でも着る物ひとつで立派に見えるということはあります。しかし、いくら立派に見えるように着飾ってみても、本当の姿までは変えることはできません。

 そんな意味をもつことわざを、ひとつご紹介します。「馬子にも衣装」の対の意味を持つ、代表的なことわざです。

衣ばかりで和尚はできぬ(ころもばかりでおしょうはできぬ)」
 単に僧衣をまとっただけでは僧侶はなれず、それなりの仏心を持たなければならない、つまり、形だけ整っていても、中身が伴わなければものの役には立たないというたとえです。

褒め言葉としてつかえる四字熟語

「馬子にも衣装」は褒め言葉として適切ではありません。しかし「衣装」という言葉がついていることから、特に相手の見た目を褒める言葉として、うっかり使ってしまうことがあります。

しかし、せっかく相手を褒めたつもりでも、言葉の使い方が間違っていては元も子もありません。正しい言葉選びたいものですね。

以下に、人を褒める意味を持つ代表的な四字熟語をあげます。ぜひ参考にしてみてください。

才色兼備

「才色兼備(さいしょくけんび)」とは、すぐれた才能と容貌を兼ね備えていることを言います。女性に対して使う褒め言葉ですね。「才色」は、「才知」と「容色」のことです。

【例文】
女子アナウンサーには、美貌も頭脳も兼ね備えた才色兼備の女性が多い。

容貌魁偉

「容貌魁偉(ようぼうかいい)」とは、男性の顔形がすぐれ、体が大きく、たくましいさまを指す表現です。「魁偉」は、体格が並はずれて大きいさまを言います。

【例文】
彼は容貌魁偉な男だけれど、実は繊細で心優しいところがある。

智勇兼備

「智勇兼備(ちゆうけんび)」とは、知恵と勇気の両方を持っていることを言います。主に男性に対して使う褒め言葉です。「智勇」は知恵と勇気のことを指します。

【例文】
社長は知勇兼備な人物として知られ、社内でも尊敬を集めている。

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