「適当」の意味
日常会話でもよく使われる「適当(てきとう)」には、以下のような意味があります。
- ある状態や目的などに程よく当てはまること。
- その場に合わせて要領よくやること。いい加減。雑
多くの人は、普段、2の意味で「適当」を使っているでしょう。「適当でいいや」とか「適当な奴」などは、「いい加減な」というニュアンスを含んでいます。しかし、「適当」には、1の意味もあり、この場合、「適当な奴」も「目的に適した人物」ということになります。
つまり、「適当だな」と他者に言われた場合、「いい加減だな」とも「目的に適して程良い」とも捉えることが出来るのです。どちらの意味で使われているかを理解するには、その場の雰囲気や前後の文脈に注意を払う事が大事です。
「いい加減」とは
ところで、「適当」の2番目の意味「いい加減」とは、どういうことでしょうか。「いい」は「良い」、「加減」は「加えることと減らすこと」で、適度に調整すること、物事の具合を意味しています。つまり、「いい加減」というのは、「ちょうど良い加減」と言う意味なのです。
例えば、レシピ通りに作った料理でも、食べる人の味覚によって「良い加減」の尺度が異なるため、「甘い」「辛い」「濃い」「薄い」「ちょうどいい」などと千差万別の感じ方があり、その結果、美味しいとか不味いとかの評価につながります。
このように、「良い加減」というのは客観的に把握したり、数値化しにくいものであることから、「適当」という言葉が「雑」というニュアンスの「いい加減」という意味に捉えられるようになったようです。
「適当」の使い方
「適当」の使い方を、2つの意味に分けて見てみましょう。
意味1の場合
【例文】
- 文化祭で私たちのクラスはお化け屋敷をする事になったが、なかなか適当な場所が見つからず、出し物を変える必要があるかもしれない。
- 野球場を新しく建設するのに適当な広さの土地がこの町にはある。
- クラスで演劇を行うことになったが、王子様役には彼が適当であると全員一致で決まった。
意味2の場合
【例文】
- 私と彼で修学旅行の行程表を作ることになったが、彼は適当に行程を決め先生に提出してしまった。
- 彼女のように何でも適当にこなして良しとしている人物は、後で痛い目を見るに違いない。
- 調理実習で彼が量りを使わずに適当に塩を入れたせいで、完成した肉じゃがはとても塩辛い味になってしまった。
- あの料亭の出汁(だし)は、昆布と鰹節が適当な配分でとても美味しい。
「適当」の類義語
「適切」
「適切(てきせつ)」には、以下の意味があります。「適当」のように、「いい加減」というマイナスの意味は持ちませんが、「当てはまる」という意味では類義語と言えます。
- よく適合していること
- ぴったり当てはまること
【例文】
- 登山中、マムシに噛まれたが、同行していた彼の適切な処置によって大事に至らなかった。
- 化学で使う薬品には危険なものが多いので適切な保管方法が必要である。
- サッカーの試合で、彼を適切なポジションに置くことで敵の脅威になったに違いない。
「妥当」
「妥当(だとう)」には、次のような意味があります。
- 物事の実際によくあてはまること
- 考え方などが無理なく適切であること
【例文】
- 彼の、あの局面での行動は妥当なものであったと思う。
- 選挙結果が妥当であったかどうかを議論する場に私はいる。
- 彼女は理系科目に力を入れるのが妥当な線だろう。
「大雑把」
「大雑把(おおざっぱ)」には、つぎの意味があります。「適当」の「いい加減。雑」という意味に近い言葉です。
- 細かいことにこだわらないさま
- 粗雑なさま。おおまか
【例文】
- 土台を大雑把に仕上げたせいで、完成品はとても不安定でグラグラしている。
- 彼女は大雑把な性格の持ち主で細かいことは全く気にしない。
- 初めは色取りを考えながら調理をしていたが、だんだん大雑把になって行った。
「適当」の対義語
「適当」の対義語は、「不適当」「不適切」「妥当でない」などがあります。名詞や形容動詞の語幹に付いて、元の意味を打ち消したり、否定する「不」が付く場合が多いのです。
【例文】
- 夕方のニュースを見ていたら、コメンテーターが不適切な言葉を発していた。これはメディアに叩かれるだろう。
- 今日のバスケの試合は、彼のミスが原因での失点が目立った。彼をスタメンに使ったのは不適当だったと言わざるを得ない。
- 彼女をレギュラーから外すのは妥当でないと監督に直訴したが、受け入れられなかった。
- 私が会議で発表した内容は不適当と判断されたため、やり直しを指示された。