「蘊蓄」とは?
「蘊蓄」(うんちく)は、「薀蓄」とも書きます。使われている三つの漢字「蘊・薀・蓄」には、いずれも金品や知識などを蓄えること、物を積むことといった意味があり、そういう漢字を重ねて意味を強調している熟語です。
「蘊蓄」の意味
「蘊蓄」には、以下のように二つの意味があります。
①深い知識
「蘊蓄」は、自ら努力して身につけた深い知識やしっかりと研究を重ねた学問を表しています。数々の書物を調べたり、実験などを幾度も行ったりして自分で得た知識というニュアンスが入ります。
②蓄える
「蘊蓄」は、金品などの実際にある物や、実力などの抽象的な物事を積み重ねて蓄えるという意味も持っています。
「蘊蓄」の使い方
現在、「蘊蓄」は、蓄えた「深い知識」を表すのに使われることが多く、金品を「蓄える」という意味で使用される例は少なくなっています。
- Aさんの『源氏物語』に関する蘊蓄は素晴らしい。
- B君が傾けるワインの蘊蓄は聞きごたえがあるね。
テレビ番組や雑誌などの媒体では、理解が深められるよう掘り下げて解説したもの、詳しい雑学や豆知識に対して使うこともあります。その場合は、漢字ではなく「うんちく」や「ウンチク」のようにひらがなやカタカナでの表記が一般的です。
「蘊蓄を傾ける」
「蘊蓄」の使い方として多いのは、「蘊蓄を傾ける」という表現です。これは、自分が得た知識のすべてを集中させて出し尽くすことで、単に披露するだけでなく、知識を元に教えたり、書物を出版したりする時にも使われます。
- これまでの蘊蓄を傾けて論文を発表する。
- 先生の蘊蓄を傾けた授業を聴講できて幸せだ。
- 宴会で酒を飲みながら、文学の蘊蓄を傾けあった。
「蘊蓄」はウザい?
匿名
(20代)
上司が毎日、延々と蘊蓄を垂れてきてウザい。仕事に集中したいので、同僚も嫌がっています。
内緒
(30代)
興味のない蘊蓄を「こんなことも知ってるんだよ!」と話し続ける友人。距離を置いたら、SNSで毎日のように送信してきてすごく迷惑。
本来、「蘊蓄」は、ネガティブな言葉ではありません。しかし、蘊蓄の意味を「普段知らなくても良いようなマニアックな知識」や「知識を自慢気にひけらかす雑学」のように捉えて、迷惑だと感じている人もおり、悩み事を相談するサイトへの相談が増えています。
テレビの雑学番組やクイズ番組などで、出演者が蘊蓄を滔々と語る姿に影響されて、同じように知識を披露している人がいるのかもしれません。
「蘊蓄を垂れる」は誤用?
インターネットや文芸作品では、「蘊蓄を垂れる」という表現が見られます。「垂れる」は、目上の者が目下の者に与えるとか、上から下に向かって下がるという意味のほかに、「文句を垂れる」のように、「言う」を卑しめていう言葉でもあります。
目上の人間が、ありがたい蘊蓄を教えてやると言わんばかりの偉そうな態度で、一方的にその知識や経験を語る場合、聞かされる側にとっては迷惑な話です。そのようなところからネガティブなニュアンスで、「蘊蓄を垂れる」という表現がされるのです。
「蘊蓄を垂れる」は、今のところ誤用とされていますし、上記のような意味や使われ方をすることから、この表現は使わないようにしましょう。
「蘊蓄」似た意味の熟語
造詣
「造詣」(ぞうけい)とは、学問、芸術、技術などの分野の深い知識だけでなく、技量(物事を行う腕前)の優れていること、技を極めていることを言い、「造詣が深い」という表現をします。「蘊蓄」と異なる点は、雑学的な知識には使わないということです。
- Dさんは、歌舞伎などの伝統芸能に対する造詣が深い。
- Eさんは、野球だけでなくサッカーにも造詣が深い人だ。
学殖
「学殖」(がくしょく)は、学問で身につけた広い知識、深い学識のことを言います。「蘊蓄」と異なるのは、蓄えるという意味がない点です。「学殖豊かな人」というような使われ方をします。
- 彼は、学殖豊かな教養人だ。
- 彼女は、学殖のある才媛です。