「稀代」とは?意味や使い方をご紹介

素晴らしい記録を残したスポーツ選手、名女優や名俳優、色褪せない物語、今も残る建築や絵画など、世にもまれな人や物事。それらを表す言葉のひとつが「稀代」あるいは「希代」です。今回は、この「稀代」の意味や使い方について解説します。

目次

  1. 「稀代」とは
  2. 「稀代」の使い方
  3. 「稀代」の類語
  4. 「稀代」の用例

「稀代」とは

稀代」の読み方はもともとは<キタイ>ですが、現在では<キダイ>の読み方も可とされています。どちらの読み方でも、アクセントは「喜劇」のように1音目に置くか、「希ガス」のように2音目に置きます。

「稀代」とは、「世にもまれなこと」あるいは「大変変わっていること」という意味ですが、前者の意味で用いられることが多いようです。「希代」と表記されることもあります。

「稀」の字義

「稀」は、音読みでは<キ>、訓読みでは<うす(い)・まば(ら)・まれ>と読みます。「薄い・まばらで少ない」や「めったにない・珍しい」といった意味がありますが、「稀代」の場合は後者です。

「代」の字義

「代」は、音読みでは<タイ・ダイ>、訓読みでは<か(える)・か(わる)・よ・しろ>と読みます。「代」の字義は複数ありますが、「稀代」の場合は「時代・人間の一生の間」といった意味です。

「稀代」の使い方

「稀代」は、おもに、「稀代の名工」や「稀代の銘刀」のように名詞を修飾します。例に挙げた通り、人に対しても、物事に対しても使われる言葉です。また、良し悪しに関わらず使われるので、「稀代の英雄」や「稀代の悪党」のようにも用いられます。

【使用例】

  • 褒美として稀代の酒を賜った。
  • この小説は稀代の犯罪を題材としている。
  • 彼女は世界中で活躍する稀代のエンターテイナーだ。
  • 彼は稀代の放蕩者と言われている。

「稀代」の類語

「絶世」

「絶世(ぜっせい)」は世にまたとないほど優れていること・並外れて優れていることを表します。珍しさの度合いは「稀代」と同じ、または上かもしれません。ただし、良し悪しを問わずに用いられる「稀代」と違い、「絶世」は良いことに対してのみ用いられます。

「非凡」

非凡(ひぼん)」とは、普通よりも特に優れていることを指す言葉です。めったにないという点においては「稀代」に通じますが、珍しさの度合いは「稀代」の方が上でしょう。

「不世出」

不世出(ふせいしゅつ)」とは、まれにしか世に現れないくらい優れているという意味です。珍しさの度合いにおいて、「稀代」と同じくらいと言えそうですね。しかし、「不世出」は良いことに対してしか使われない点では、「稀代」と異なっています。

「レア」

「レア」は英語の「rare」に由来する言葉です。レア物、レアアイテム、レアケース、超レア、激レアなど、日常的にも用いられていますね。

「rare」には生焼きという意味もありますが、珍しいことという意味もあります。後者は「稀代」に類する言葉ですが、珍しさの度合いは低いでしょう。

「稀代」の用例

『走れメロス』

おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う(つぼ)だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身えて(なえて)、もはや芋虫(いもむし)ほどにも前進かなわぬ。
太宰治『走れメロス』

引用した場面は、メロスが激流から這い上がり、山賊を打ち倒したものの、帰路で力尽きて倒れてしまったところ。王はメロスは戻るとは思っていないわけですから、全く信用されていない人=メロスです。ここでは、信用されていないことを強調して「稀代の」と表現しています。

『黄金豹』

かくして、名探偵明智小五郎と小林少年は、またしても、稀代の怪盗二十面相とのたたかいに、みごと勝利をおさめました。ネコむすめ、ネコ夫人、そのほかの同類も、みなつかまったことは、いうまでもありません。
江戸川乱歩『黄金豹』

引用したのは作品の結びの一文です。『黄金豹』は明智小五郎と怪盗二十面相との戦いを描いたシリーズの一つ。明智の前に何度となく立ちふさがる二十面相は、比類なき怪盗というわけですね。


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