「好々爺」とは
「好々爺」は、「こうこうや」と読みます。中国語のようにも見えますが、れっきとした日本語です。人のよいお年寄り(基本的にはお爺さん)を意味します。
「好々爺」の字義
「好々爺」の意味をより明確に理解するために、用いられている漢字の意味を確認してみましょう。
「爺」の字義
まず、「爺」という漢字。音読みは「ヤ」、訓読みは「おやじ・じじ」です。代表的な意味は2つあります。
- おやじ・父の俗称。(阿爺(あや))
- じじ。じじい。老人。また、老人の尊称。
現代では、「父」の意味ではほとんど使われず、「老人」わけても「おじいさん」の意味で使われていますね。「好々爺」の「爺」もそのまま「おじいさん」という解釈で問題ありません。
「好」の字義
「好々爺」の意味が誤認される可能性があるとすれば、「好」の字が原因でしょう。音読みは「コウ」、訓読みは「この(む)」「す(く)」です。「よ(い)」「よしみ」などと読むこともあります。
この「好」は、実に多くの意味を持つ漢字です。代表的なものを挙げると、次のようになります。
- 愛する。このむ。(好悪・愛好)
- 美しい。(好男子)
- すぐれている。立派な。(好投。好手)
- よい。このましい。(好運・好機・絶好・良好)
- よしみ。(好誼・友好)
- このみ。趣味。(好尚・嗜好)
「好々爺」の「好」は上の4の意味で用いられています。「好人物」と同じ使い方ですね。1の意味で解釈すると「大好きなお爺さん」、2の意味でとらえると「容姿のすぐれた老人」となってしまい、大きく意味がずれてしまいますから注意しましょう。
ちなみに、2の熟語例に挙げた「好男子」は「人柄の優れた男子」と思われそうですが、本来は「美青年」と同義の言葉です。
「好々爺」の使い方
「好々爺」という言葉には、「人のよいお爺さん」以上の意味はありません。発言者が、「人柄『だけ』はいい人だ」や、「お人よし」といったニュアンスで使う可能性はありますが、それは使用者の意図によるもので、言葉の意味とは無関係です。
- 裏のご隠居は、いつも穏やかな人だ。好々爺とは、ああいう人物のことを言うんだろうね。
- 山下先生は、好々爺の笑みで僕たちの議論を見守っていた。
「好々爺然」
「好々爺然(こうこうやぜん)」という言葉があります。「好々爺のように見える態度や様子」という意味です。
この「見える」が重要で、「好々爺然」という言葉には、「一見すると好々爺だが本当のところは…」というようなニュアンスが含まれることがあります。
- あの、いつも公園のベンチに座っているお爺さん。好々爺然として優しそうな感じだね。
- 丁寧な口調と好々爺然とした振る舞いに皆騙されているが、あの爺さん、かなりの狸だよ。