「安寧」とは?
「安寧」(あんねい)は、次のような意味をもつ言葉です。平穏無事であること。世の中が平和で安定し、穏やかで不安がないこと。安泰であること。また、そのさま。
基本的に個人を対象には用いず、国や社会、家族などの全体に対して使われます。読み方も難しく、日常会話ではほとんど登場しない言葉です。
だからといって死語かといえば、決してそうではありません。端的に言えば平和を指す言葉であるゆえに、皇室や国家的な行事などにおいて、しばしば見聞きすることがあります。
日本において、天皇があらたに即位した年に執り行われるのが、その一世一代の最も重要ともいわれる大嘗祭。その儀式において、新天皇が祈るのは国と国民の安寧、そして五穀豊穣です。
政治の世界でも、国家、国民の安寧のため…というような言葉がおりおりに登場するのは、「安寧」がおもに社会、世の中の平和や安定を意味することからも、当然と言えましょう。
「安寧」の使い方
「安寧」の「安」も「寧」も、落ち着く、安定する、という意味をもつ漢字です。「安寧」の使い方のポイントは、上述したように、そのような安定、平穏が、個人を対象としない点にあります。
人に対して用いるときも、たとえば、「鈴木君の安寧を祈ります」というのではなく、「鈴木家の安寧を祈ります」というように一家全体に対して用いるのが正しい使い方です。
「安寧」の文例
- 山田氏が政治家を目指した理由は、戦災孤児となった父の壮絶な苦労話を聞かされつづけ、国家の安寧がなににも勝ると確信したからだそうだ。
- 国の経済の安定が国民の安寧に結びつくことはもちろんだが、昨今は増大する自然災害から国民を守ることも急務となっている。
- 国によっては、警察など、社会の安寧のために存在する組織自体が腐敗していることがある。
- 長男が友人に対して傷害事件をおこして逮捕されて以来、小林家の安寧は崩れ去った。
「安寧」の類語
「平安」の意味と使い方
「平安」とは、人心、国や社会などが平穏無事であること、安らかで穏やかであることを意味する言葉です。「安寧」は個人を対象としないことが基本であるのに対し、「平安」は個人も世の中も対象とします。
【文例】
- 日本において、昭和の時代は、戦中・戦後・高度成長期・安定期と、動乱から平安までさまざまなプロセスをへた稀有なものであった。
- 地位や経済は人の人生に大切な要因ではあるが、愛と平安がある生活は、なによりかけがえないものといえるのではないだろうか。
「安泰」の意味と使い方
「安泰」(あんたい)とは、不安がなく、穏やかで無事であることを意味する言葉です。「国家安泰」という言葉もあるように、国や社会、組織なども対象とし、同時に個人にも用いることができます。
【文例】
- 国が安泰であれば、国民の基本的な生活と幸福は守られる。二度と戦争を起こしてはならない。
- 山本君は、資産家の一人息子として苦労なく安泰な生活をしてきたので、多少世知に疎いところがある。
「静穏」の意味と使い方
「静穏」(せいおん)とは、読んで字のごとく、静かで穏やかなこと、ひっそりとしていることを意味します。気流の状態(煙がまっすぐに昇る程度)を意味する気象用語でもありますが、こちらの意味としては「安寧」の類語には入りません。
「安寧」も「安泰」も「平安」も、静けさがなくても成立しますが、「静穏」はひっそり静かな穏やかさに重点をおいた言葉です。
【文例】一代で貿易会社を築き上げ、常に闘いのようだった日々だったので、引退してからは心身ともに静穏に暮らしたいと思っている。