「稚拙」とは?
「稚拙」(ちせつ)とは、子どもじみて未熟なこと、幼稚でへたなこと、拙く劣っていること、またそのさま、などを表す言葉です。基本的に、レベルが低く拙い状態を指しています。
深く意味を理解するために「稚」と「拙」の漢字をそれぞれ検証しましょう。「幼稚」の「稚」、「拙い」の「拙」ですから、この二つによる構成であれば、眺めただけでも意味がわかるというものです。
「稚」は、音読みが(ち)、訓読みが(いとけない)。意味は幼い、いとけない、若い。あるいは幼いもの。十分に成長していないことを表す漢字です。代表的な使用例は、幼稚、稚児、稚魚などがすぐに思い浮かびますね。
「拙」は、音読みが(せつ)、訓読みが(つたない)。次の二つの意味をもちます。①まずいこと、つたないこと。例は、拙劣、など。②自らのことをへりくだっていう謙遜の語。例は、拙著、拙者など。「稚拙」における「拙」は、①の意味によるものです。
「稚拙」の使い方
「稚拙」を使うさいに、実際の幼児、児童の行動や創作などの評価に用いるというよりも、「子どもじみて拙い」状態を表している言葉であることに注意しましょう。
幼少児の為すことが子どもじみているのは当然です。成人の為すことが子どもじみて拙いからこそ、「稚拙だ」と評されるのです。
また、人間そのもの(体型や人格)を対象とするものではなく、人が為す物事のレベルを対象とします。ただし、考え方や行動の全体的な評価として用いられることも少なくありません。
自らの為したことに「稚拙ながら」と前置きのように用いて、謙遜の意を表すことも可能です。ただし、子どもじみて、という意味を含むこともあり、ビジネスシーンでの謙遜には用いないほうが無難といえます。力不足ながら、ぐらいに留めましょう。
「稚拙」の文例
(A男)
ハロウィーンはもともと子供のためのものだろう?昨今は、馬鹿騒ぎをして街を汚したりする若者たちの稚拙な行動が目に余るなあ。
(上司B子)
あなたの企画書には、市場調査データも対象商品の詳細な分析もないのね。これでは、稚拙なただの願望レポートに過ぎないわ。
(陶芸教室講師)
君はこの教室で10年学んでいるのに、今回の作品はあまりに稚拙だなあ。
(C子)
稚拙ながら、エッセイ集を自費出版したの。もしよかったらお目通しください。
「稚拙」の類語
「幼稚」の意味と使い方
「幼稚」は、次の二つの意味をもつ言葉です。
- 幼いこと。年齢が低い子供であること。
- 考え方や行動、やり方などが拙く未熟なこと。
「稚拙」の類語にあたるのは2の意味です。1の意味においては、たんに年齢的に幼少、児童であることを示す言葉ですが、2の意味では、子どもじみて拙いというネガティブな意味を表します。
【文例】
- 小学校の運動会で保護者によるリレー競技があったが、ルールをめぐって喧嘩が始まった。保護者たちのあまりに幼稚な言動に、教師たちも困り果てる始末であった。
- 町内会の会報誌の挿絵を依頼されたが、あまりに幼稚な出来栄えとして却下されてしまった。
「未熟」の意味と使い方
「未熟」は、次の二つの意味をもつ言葉です。「稚拙」の類語としては、2の意味が用いられています。
- 作物や果実などが充分に熟していない状態。
- 人格や技術、学問などの修練や経験などが不足していて、十分なレベルではないこと。
【文例】
- 中村氏は60代という年齢ながら、親の資産によって生活するという労働経験のなさや、家族をもたない勝手気ままな生き方によって、人格が未熟なまま老年にさしかかってしまった。
- 昨今は畳職人の成り手が不足し、急遽集められた技術の未熟な人間が作業することも稀ではない。