「月に叢雲」とは
意味
「月に叢雲」は「つきにむらくも」と読みます。物事がうまくいっているときというのは、とにかく邪魔が入りやすく、長続きはしないものであるという意味です。
今も昔も日本人は月を眺めるのが大好きです。月がきれいな夜には一人で、あるいは仲間たちとお月見を楽しんできました。しかし、いざ月を見上げるとすぐに雲が覆い隠してしまうこともよくありますね。
この言葉は「月に叢雲、花に風」と続きます。梅の花や桜の花など、お花見もまた日本の風習です。けれど、お花見をしようとしても風が吹き荒れて花びらを散らしてしまう、という経験をした人も、また多いでしょう。
このように、「月に叢雲」は、本来は自分の力ではどうにもならないことに翻弄される様子を表す言葉です。今ではチャンスには邪魔が入りやすい、良い状況はいつまでも続かないという意味で使われています。
叢雲
「月に叢雲」に含まれている「叢雲」について少しだけ説明します。「月に叢雲」では「むらくも」と読みましたが、「そううん」と読むこともあります。
「叢雲」とは群れた雲のこと。集まって群れる雲やかたまって動く雲です。専門的には高層雲と呼びます。羊のように群れているということで、「ひつじ雲」という別名を持つ雲です。
ちなみに、歴代天皇が継承してきた三種の神器の一つ、草なぎの剣は別名「天の叢雲の剣(あめのむらくものつるぎ)」と呼ばれます。八岐大蛇という怪物を退治して得た剣ですが、この怪物の居場所に雲がかかっていたことからこう名付けられたそうです。
「月に叢雲」の使い方
「月に叢雲」は以下のような意味で使われます。言葉そのものの意味は変わりませんが、状況や背景事情によって解釈の変わるタイプのことわざとも言えます。
- 状況は大変良いにもかかわらず、何かと邪魔が入る。あるいは入りやすい。
- 有利な立場やシチュエーションは長持ちせず、やがて終わってしまう。
- 世の中はどうにもままならぬものだ。
例文
- 月に叢雲とはよく言ったもので、せっかくの休日だというのにあれこれ用事を言いつけられてしまった。
- ライバルが転校し今がチャンスと彼女にアタックしてきた。しかし、今度は自分が転校することになってしまった。月に叢雲とはこのことだ。
- 仕事をリタイアし、悠々自適な生活ができると思った矢先に病が発覚した。人生は月に叢雲だとしみじみ実感した。
NG例
「月に叢雲」は相性が良くないという意味ではありません。もし相性の悪さを表したい場合には「水と油」「不倶戴天」などを使いましょう。
【NG例】
- あの二人は月に叢雲の関係だからね。近づかせないようにして。
- 月に叢雲、だね。カーテンと壁の色がケンカしている。
- さすがにフルーツタルトにタバスコはちょっと。月に叢雲すぎない?
「月に叢雲」の類語
花に嵐
「花に嵐」とは支障が出やすい、邪魔が入りやすいという意味です。花が美しく咲いているのに、嵐が吹き付けてせっかくの花を台無しにしてしまう様子に由来します。
時期的にも、梅や桜が咲く3月から5月は低気圧が発達しやすく、強風や嵐が吹き荒れることも多いものです。この頃の嵐は、「春の嵐」「メイストーム」とも呼ばれます。
好事、魔多し
「好事、魔多し」とは、めでたいことやうまくいきそうなことなどの好いことには邪魔が入りやすいという意味です。「好事魔、多し」ではなく「好事、魔多し」と区切ります。