「矯める」とは?
「矯める」は「ためる」と読みます。古語では「矯む(たむ)」と表記されていましたが、意味はほとんど同じです。
- 悪い性質・習慣や癖などを直す。
- 曲がっているものをまっすぐに、まっすぐなものを曲げてよい形にする。
- 事実を故意に曲げる。いつわる。
- じっと狙いをつける。じっと見る。
「矯める」の使い方
「矯める」という言葉を使った例文を挙げておきましょう。各文の1~4の番号は、上で紹介した意味の番号に対応しています。
- 今のままだと肘に負担がかかり過ぎている。投球フォームを矯める必要があるね。
- 盆栽を矯めて枝ぶりをよくする。
- 彼は、その不正を矯めるために千言万語を費やしていた。
-
何やら、もの思わしげな清葉の容子(ようす)を、最(も)う一度矯めて視て(泉鏡花『日本橋』より)
「矯める」を使った言い回し
「矯める」という言葉は、日常的にはあまり使われていませんが、いくつかの定型的な言い回しやことわざの中に見られます。代表的なものを紹介しておきましょう。
「角を矯めて牛を殺す」
「角(つの)を矯めて牛を殺す」とは、わずかな欠点を直そうとしてかえって全体を駄目にしてしまうことを意味します。牛の曲がった角をまっすぐにしようと叩いたり引っ張ったりすると、牛が弱って死んでしまう、というところからきたことわざです。
後漢の皇帝、桓帝のエピソードを由来に持つ、「矯角殺牛(きょうかくさつぎゅう)」という故事成語が元になったとされています。
同様の意味を持つ表現としては、以下のようなものがあります。
- 枝を矯めて花を散らす。
- 枝を撓めんとして幹を枯らす。
- 仏を直すとて鼻を欠く。
「角を矯めて牛を殺す」の英語表現としては、次のようなものが挙げられます。
- Better a snotty child than his nose wiped off.(鼻たらしでも鼻のある子の方が、鼻がちぎり取られてなくなった子よりもよい)
- The remedy may be worse than the disease.(治療が、病気よりも悪いこともある)
「矯めるなら若木のうち」
「矯めるなら若木のうち」とは、「人は成長してからは、悪い癖や欠点を改めるのが難しいので、柔軟性のある若いうちに悪いところは直しておくべきだ」という意味のことわざです。
木の枝ぶりを整えるならば、枝の柔らかい若いうちにするべきで、成長して硬くなってからでは難しい、ということに由来します。
同様の意味の表現としては「鉄は熱いうちに打て」が挙げられます。こちらは、「矯めるなら若木のうち」より広く知られているかもしれませんね。他にも「老い木は曲がらぬ」や「彼岸過ぎて麦の肥、三十過ぎての男に意見」などのフレーズもあります。
「矯めるなら若木のうち」を英訳すると、以下のようになります。
- Best to bend while it is a twing.(小枝のうちに曲げるのが一番良い)
- Thraw the wand ehile it is green.(枝は青いうちに曲げよ)
- Strike while the iron is hot.(鉄は熱いうちに打て)
「ためつすがめつ」
「ためつすがめつ」とは、「色々な方向からよく見る様子」を表す言い回しです。漢字で表記すると「矯めつ眇めつ」となります。
「じっと狙いをつける」という意味の「矯む」と、「片目を細めて見る」という意味の「眇む(すがむ)」のそれぞれの連用形を、「~したり」という意味の完了の助動詞「つ」で結んでいます。
「じっと眺めたり、片目を細めて見たりする」行動は、ものをしっかり観察しようとするときによく見られる姿ですね。
【例文】
- 試験官が受験票をためつすがめつしている。写真と印象が違うと思われているのかと、落ち着かない気分になった。
- 偽物だと言われる指輪をためつすがめつしてみたが、素人にはまったく判断できなかった。