「鉄は熱いうちに打て」の意味
「鉄は熱いうちに打て」には、二つの意味があります。
- 鍛錬やしつけなどは、純真な精神を持っている若いうちに十分にするべきである。
- 物事は、関係者の気持ちが熱いうちに着手したり対策をとったりしておくべきである。
鉄は真っ赤に焼けているうちにハンマーでたたけば、思い通りの形にすることができますが、冷めるとどうしようもなくなります。そこで何事も時機を逃してはいけない、という例えとして使われています。
「鉄は熱いうちに打て」の使い方
- 夫がようやくスポーツクラブに申し込もうかな、と言い出した。鉄は熱いうちに打てとばかりに、早速その晩二人で入会を申し込んできた。
- 鉄は熱いうちに打てという言葉を肝に銘じ、帰社後すぐに取引先へのプレゼンの準備を始めた。
- 鉄は熱いうちに打てと言うから、子どもたちの想像力をのばすため、今からたくさん本を読ませたい。
上の二文は、機が熟している時にすぐに行動すべきだという意味で使われています。下の一文は、若いうちに鍛えよ、という意味で使われていますね。
「鉄は熱いうちに打て」の由来と変遷
「鉄は熱いうちに打て」は西洋から日本に入ってきたことわざですが、その形が現在のような言い回しになるまでには、いろいろな形で表現されてきました。その変遷を見てみましょう。
オランダ語のことわざ
日本で最初にこのことわざが紹介されたのはオランダからで、19世紀早々だったと言われています。『和蘭字彙』(1855~58年)には以下のような表現があります。
オランダ語のことわざにならって、当初は日本でも「鍛(きた)ふ」という動詞が使われていました。
英語の翻訳
その後このことわざは、英語やフランス語などでも紹介されるようになり、少しずつ形を変えながら広く浸透してきました。英語ではStrike while the iron is hotと表現され、「鍛ふ」から「打つ」へと訳が変わりました。日本語訳の変遷は以下の通りです。
少しずつ現在の形に近づいていますね。ちなみに上の2点では解釈が示されておらず、下の1点で初めて「思い立った日を吉日とせよ」という解釈が加えられました。
「鉄は熱いうちに打て」の日本独自の意味
もともと西洋のことわざには、物事は情熱があるうちに着手すべきだ、という意味しかありませんでした。日本でも当初は西洋のことわざと同じ使い方だったのですが、昭和30年ごろから、児童や生徒の純真な精神を失わないうちにこれを十分に鍛え導け、という教育論的な独自の意味を持つようになりました。
「鉄は熱いうちに打て」の類語
- 好機逃すべからず(せっかく手にしたよい機会は、取り逃がしてはならない。)
- 矯めるなら若木のうち(枝ぶりが曲がっているのを直すには若木のうちがよいことから、子どもを立派に育てたいなら、小さいころにしっかりしつけをせよ)
- 思い立ったが吉日(何かしようと思ったら、すぐに始めなさい)
「鉄は熱いうちに打て」の英語表現
- Strike while the iron is hot.(鉄は熱いうちに打て)
- Opportunity never knocks twice at any man's door.(好機が二度訪れることはない)
- Make hay while the sun shines.(太陽の照っているうちに干し草をつくれ)
「鉄は熱いうちに打て」の諸外国での表現
西洋や日本だけではなく、他の国々でも「鉄は熱いうちに打て」と同じようなことわざがありますので、いくつかをご紹介します。
- きゅうりは青いうち、メロンは黄色いうちが食べ頃(トルコ)
- 狼は温もりのあるうちに皮を剥げ(クロアチア)
- 田植えをするなら土が熱いうちに、女を口説くなら心が熱いうちに(カンボジア)
恋愛においても「鉄は熱いうちに打て」と言えますね。